「黒幕なんかいなかった」説
――それ以外に黒幕となり得る人はいないのですか?
寺田屋騒動で龍馬が拳銃で2人の捕吏を殺したことから、捕吏に同情した見廻組が暗殺したという説もありますが、佐々木ら旗本と捕吏では身分が違いすぎ、捕吏の上司(京都町奉行所)や家族から佐々木らが頼まれ、恨みを晴らすのは筋違いだと思います。
では、私ならどう考えるかですが、基本的に近江屋事件は佐々木らの功名心が起こしたもので、黒幕はいなかったと思っています。しかし、仮にいたとしたら、紀州藩家老の三浦休太郎だと思います。事件後、三浦は実際に海援隊と陸援隊に襲撃されているからです(天満屋事件)。
海援隊と陸援隊が間違った情報を基に行動を起こしたとは考え難く、黒幕がいたとしたら蓋然性は高いと思います。
龍馬が生きていれば、歴史は変わった?
――龍馬の死は、どのようなインパクトがあったのでしょうか?
明治維新後、龍馬が「世界の海援隊」を率いて貿易航路を切り開いていたかと思うと残念でなりません。後に岩崎弥太郎が龍馬の夢を引き継ぎますが、スタートラインにおける人脈に違いがありすぎるので、海援隊は後の三菱を大きく上回るコングロマリットになったかもしれません。
――志半ばで倒れた龍馬と現代に続く三菱グループを築いた岩崎弥太郎とでは、何が2人の明暗を分けたと思いますか?
明暗とは言い切れませんが、龍馬がいなくなったことで、弥太郎の居場所ができたことも確かです。弥太郎は頑固で功名心が強く、人付き合いもうまいとは言えず、利己的な人間です。ただ足軽階級から成り上がるために、努力を惜しみませんでした。それが三菱グループを築くことにつながっていくわけです。
ここから学べることは、「努力はすべてのウィークポイントを覆せる」ということです。
――龍馬が生きていたら、戊辰戦争を止められたと思いますか?
西郷らは西郷らの思惑で動いているので、龍馬の死によって止め役がいなくなったというのは考えすぎです。同じように戊辰戦争も行われたはずです。ただし、平和のために龍馬が奔走していたのは間違いなく、新政府と会津藩の間を取り持ち、東北戊辰戦争はもっと小規模なものになったかもしれません。

