人生の軌跡がわかるDNA占い
安藤:生命は基本かなり偶然です。行動遺伝学の世界的権威、ロバート・プロミンは遺伝を強調していますが、「環境はほとんどランダムだ」ということも、非常に大きな発見としてプロミンは重視していますね。
偶然性を減らすために、制度や教育システムを作るわけですが、実際に減らすことは難しい。僕は「偶然が生んだ必然」と言っていますが、その人が持つ条件は偶然だけれど、その中でどう人生を選択していくかっていう連鎖は、本人にしかない遺伝的な条件に導かれており、その意味で「必然」と呼べるものでしょう。
橘:GWAS(ゲノムワイド関連解析)によって人間の全ゲノムが解析できるようになり、遺伝と進化についてより詳細に論じることが可能になった。これはとてつもなく大きな知のパラダイム転換だと思いますが、残念ながら日本ではほとんど理解されていません。
河田:ええ。人のさまざまな性質の違いは、ゲノム配列の違いで説明できます。ふたごの研究で「だいたい半分が遺伝する」と言われてきたものが、ゲノム配列の違いに由来し、心理的性質・精神疾患・知能・身体的特徴などあらゆる人間の性質に影響しています。ふたごから推定していた遺伝率を、今やゲノム配列から直接推定できる時代になったんです。
橘:プロミンは、受精卵のゲノム解析をすればおおよその人生の軌跡がわかる時代が来るとして、「DNA占い」と呼んでますね。
MBTIよりも“当たる”
河田:性格はだいたい5つ、ビッグファイブ(神経質性、協調性、開放性、誠実性、外向性)に分かれます。性格診断として流行りのMBTI(Myers-Briggs Type Indicator/マイヤーズ=ブリッグス・タイプ指標)の16タイプはユング心理学がベースで、再現性がとれず研究者は信じていません。
それはさておき、この5因子の違いが、性格だけでなく、教育達成度、宗教への関与、リスク行動など、その人のあらゆるところに関係している、とゲノム解析でわかってきました。
橘:もちろん未来をすべて知ることはできないでしょうが、受精卵を子宮に着床させる前に、これから生まれてくる子どもが外向的なのか内向的なのか、大学を卒業しそうか高卒や高校中退になりそうか、経済的に成功しそうかどうかまで、その傾向をスコアにできるということですか?
河田:はい。実際に、あるアメリカの会社が研究の一環として、胚に対して学歴・世帯収入・認知能力・主観的幸福度のスコアを提供していたとされています。どの程度信頼性があるかは疑問ですが。
安藤:その通りです。そして行動遺伝学の大家、タークハイマーが唱えた行動遺伝の第一原則は「あらゆる行動が遺伝的」ですから、知能やパーソナリティだけでなく、あらゆる次元の行動の個人差に関して、データさえあれば、すべて一定の確率で予測できることになります、理論的には。あとはデータを手に入れようとするかだけの問題ですね。
検索時に関連する記事が表示されます





