相続した年金に税金をかける問題点
「所得税法9条1項は、その柱書きにおいて『次に掲げる所得については、所得税を課さない。』と規定し、その15号において『相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含む。)』を掲げている。
同項柱書きの規定によれば、同号にいう『相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの』とは、相続等により取得し又は取得したものとみなされる財産そのものを指すのではなく、当該財産の取得によりその者に帰属する所得を指すものと解される。
そして、当該財産の取得によりその者に帰属する所得とは、当該財産の取得の時における価額に相当する経済的価値にほかならず、これは相続税又は贈与税の課税対象となるものであるから、同号の趣旨は、相続税又は贈与税の課税対象となる経済的価値に対しては所得税を課さないこととして、同一の経済的価値に対する相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除したものであると解される。」
原審の福岡高裁は、二重課税かどうかは「法的にみるべきだ」と考え、年金受給権という権利と個別の年金は法的には別のものだから「二重課税ではない」という国(国税当局)の見解を支持しました(福岡高裁平成19年10月25日判決・訟務月報54巻9号2090頁)。
払いすぎた税金を10年分取り戻せるように
しかし、最高裁判所は、二重課税かどうかは「法的」ではなく「経済的(な価値)」の観点から「同一」といえるかどうかで考えるべきだ、という判断枠組み(判断をするための基準や指針のことです)を採用したのです。
その結果、非課税所得を定めた所得税法9条1項17号(当時は15号)の規定が適用され、「もらった初年度の年金については、所得税は課されない」という判断が示されました。この最高裁判決は、過去30年にわたり課税をされてきた「年金特約付き生命保険」について、その課税実務が「所得税法」に照らして誤りであるという判断によるものでした。
結果、判決後、過去10年について、非課税になるはずなのに課税をされていた納税者に対して、「申請をすれば還付をします」という措置がとられました。法律上は、最大でも過去5年分についてしか還付できないはずでしたが、法改正を行い、過去10年分まで延長したのです。

