タダで得た財産に所得税がかからないルール

生命保険金は受取人として指定された者に支払われるもので、民法上の「相続財産」ではなく、遺産分割の対象ではありません。しかし相続税法では、相続によって得た財産ではあるので、保険料を被相続人が負担していた場合、相続税が課税される財産とみなすのです。

いずれにしても、相続開始によって個人が得た財産に対しては、「相続税」が課されるわけですが、この話は、何かと重なる気がしないでしょうか。そうです。本書がテーマにしている「所得税」です。

所得税は、個人が得た所得に対して課されるもので、相続税は、個人が相続で得た財産に課されるものです。「所得」か「相続で得た財産」か、という違いはありますが、どちらも「個人」が得た所得に対して課されるという点では同じです。また、所得は「あらたに流入した経済的価値」で、その理由や原因は問わないものでした(包括的所得概念)。

そうすると、相続開始という利得を得た理由や原因は考慮せず、単にタダで「財産を得た」という点だけでみると、これは所得税が課税の対象にしている「所得」にもあたるはずです。そうすると、相続によって財産を得た相続人には「相続税」が課され、さらに「所得税」も課される、というのが論理的であるはずです。

しかし、現実にはそうはなっていません。所得税は課されず、相続税だけが課されるのです。その理由は、所得税法の9条1項17号に非課税規定があるからです。

所得税の木製ブロックと電卓
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税金の二重払いを防ぐための特例

【所得税法9条(非課税所得)】
次に掲げる所得については、所得税を課さない。(略) 一七 相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの(相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)の規定により相続、遺贈又は個人からの贈与により取得したものとみなされるものを含み、同法第二十一条の三第一項第一号(贈与税の非課税財産)に規定する公益信託から給付を受けた財産に該当するものを除く。

このように、「相続……により取得するもの」(相続財産)および「相続税法……の規定により相続……により取得したものとみなされるもの」(みなし相続財産)については、「所得税を課さない」ことが、所得税法の非課税規定のなかで明らかにされているのです。

逆にいえば、この非課税規定が存在しなければ、「相続財産」にも「みなし相続財産」にも、相続税が課されたうえで、さらに所得税も課される、ということになるのです。

しかし、それでは、同じ原因によって得た同じ財産に対して2つの税金をかけることになります。これでは「二重に税金が課される」ことになり、納税者にこくな結果となってしまいます。国民の理解も得られないでしょう。

こうして、相続税と所得税の「二重課税」を防止するために、所得税法の9条1項17号は規定されたものだと理解されています。なお、個人が個人から贈与を受けると贈与税が課されますが、これについても所得税の二重課税が起きないよう、この条文は手当てをしています。「個人からの贈与により取得するもの」の部分です。