台湾有事は「南西だけの戦争」ではない
しかし軍事戦略上重要なのは、「3カ国が完全な同盟国かどうか」ではない。
日本が三方向への対応を迫られるかどうかである。
ここに日本の安全保障議論の盲点がある。
われわれは台湾有事について語るとき、台湾、尖閣、沖縄、宮古、石垣、与那国という地図を思い浮かべる。
しかし実際の危機では、日本列島全体が一つの戦域になる可能性がある。
中国が南西から圧力を掛ける。
ロシアが北から牽制する。
北朝鮮が日本海側から弾道ミサイルを発射する。
そうなれば自衛隊は、戦闘機も、イージス艦も、早期警戒機も、ミサイル防衛も、情報収集能力も、限られた戦力を分散せざるを得ない。
相手側から見れば、必ずしも日本を三方向から同時に「攻撃」する必要すらない。
演習、艦艇航行、軍用機の接近、ミサイル発射。
これだけでも日本に防衛資源を使わせることができる。
いざというとき、米国は助けに来るか
戦争とは、敵の領土を占領することだけではない。
敵に選択肢を与えず、戦力を望まない場所へ拘束することも立派な軍事作戦なのである。
だからこそ、いま日本に必要なのは「中国だけを見た安全保障」からの脱却だ。
中国が最大の戦略的脅威であることは間違いない。
しかし中国だけを見ていれば、日本は北を突かれる。
ロシアだけを見れば南西を突かれる。
北朝鮮を単なるミサイル問題として処理すれば、複合危機への対応を誤る。
日本は今後、中国・ロシア・北朝鮮による「三方面同時圧力」を前提に防衛体制を組み立てなくてはならない。それは極めて困難なタスクである。
そしてもう一つ、厳しい現実を直視しなくてはならない。
米国にも限界があるということだ。
米国とイスラエルが始めたイラン戦争によって、西太平洋の空母を中東へ動かさざるを得なかった事実は、日本に重大な問いを突きつけている。
「いざというとき米軍が来る」のではなく、そのとき米軍はどこにいるのか。
日本の安全保障は、そこから考え直さなくてはならない時代に入ったのである。

