「コンピュータに決心させてはならない」
ここで『作戦要務令』が重要なのは、「決心」を意志の問題として定義している点だ。つまり、最終的には「私はこうする」と言える人間が必要なのである。
この思想を戦後、経営論へ応用した大橋武夫は、さらに興味深いことを述べている。
「コンピュータに決心させてはならない」
この言葉は、現代において驚くほど示唆的である。もちろん、大橋がこの文章を書いた時代、現在のAI社会は存在していない。しかし、本質的問題はまったく変わっていない。
コンピュータは分析を行うことはできる。膨大なデータを処理することもできる。しかし、「どう生きるか」「何を守るか」「どこに賭けるか」という最終判断は、人間にしかできない。なぜなら、それは単なる計算ではなく、「価値判断」だからである。
新・帝国主義の時代では、環境変化の速度がさらに加速する。その時、「分析が完全に終わるまで待つ」という発想は、組織を硬直化させる。だからこそ、最後には「私はこうする」と言える人間が必要になる。
つまり、戦略の核心とは、「知識量」ではない。決心できるかどうかなのである。
データは重要である。分析も必要である。しかし、それらはあくまで補助に過ぎない。最終的に未来へ責任を負うのは、常に人間なのである。


