EV一本に絞らなかった豊田章男の判断

業界としても全面的にEV一色に染まるなかで、内燃機関から燃料電池まで幅広い選択肢を残すべきだと主張し続けたトヨタの豊田章男会長は、明らかに時流に逆らっているかのようにすら見えた。

しかし、豊田氏には信念があった。顧客のニーズも充電ステーションの整備状況も、地域ごとに違う。EV一本に絞るには早すぎる。決して反EVだったわけではないが、現実的な市場環境を分析し、EVに全てを賭けるには早すぎると判断した。

やがて市場は、ゆっくりと、しかし確実に豊田氏の見立てどおりに動いていった。「豊田会長はEVの大量生産を先送りすることで、数十億ドルを節約した」と、カナダ自動車ニュースサイトのカー・バズは分析する。EVの大量生産に前のめりにならなかった分、EVの販売が停滞する今になって、巨額の損失処理を迫られずに済んだ。

トヨタがアメリカで20以上の車種にハイブリッドを用意しているのに対し、GMはコルベットにしかハイブリッドの選択肢がない。GMも現在はハイブリッド強化に動いており、バーラCEOは1月時点で、ハイブリッドとPHEVの戦略を検討中だと述べたが、生産時期は未定だ。

フォードもハイブリッドの選択肢は限られ、主力は小型ピックアップのマーベリック、F-150、SUVのリンカーン・ノーチラスだ。

シボレー・コルベット E-Ray クーペ(C8、2024年)
シボレー・コルベット E-Ray クーペ(C8、2024年)(写真=Charles/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

EV生産をやめ、ガソリン車に戻す工場も

EVに賭けた代償を、GMは2025年末の決算で支払った。

同社が第4四半期に計上したEV関連の特別費用は60億ドル(約9540億円)で、その大半が北米分だ。内訳は、EV製造設備の評価減など18億ドルと、電池をはじめとする調達契約の解消費用など42億ドルである。

これに、中国の合弁会社である上汽通用汽車の再編に伴う11億ドル(約1750億円)が加わる。第4四半期の費用計上額は、合わせて71億ドル(約1兆1300億円)。GMの2025年通期の純利益27億ドルの、2.6倍に相当する額が吹き飛んだ。

GMは人員にも手をつけている。EV工場と電池工場で、およそ3400人に無期限・一時のレイオフを実施する。EV専用に整備されたデトロイトのファクトリー・ゼロなどが対象で、大半は今年1月5日付となっている。

EV路線からの転換は、工場の現場で目に見えて進行している。GMは、ミシガン州オライオンの組立工場について、EVの生産をやめ、ガソリンエンジンのフルサイズSUVとピックアップの生産に切り替えると決めた。

ただし、その大型車もガソリン高の逆風と無縁ではない。EVの生産能力を絞る一方、即座にハイブリッドを開発・市場投入することは叶わず、燃費で不利な商品構成に頼る形が当面続く。