「オルタナフード専門」の希少肉卸

なお、米とサーカスの火の鳥鍋に使われているインドクジャクは、「Noblesse Oblige(ノブレス オブリージュ)」という会社が卸した肉だ。この会社は、オルタナフード(社会問題解決性食材)専門の希少肉卸である。代表の加藤さんは、宮古島を訪れた際にクジャク肉と出合い、さらに有害鳥獣であることを知って、そこから積極的に島の外でも活用する道を探ったという。

宮古島で防除されたクジャク。他の方法よりも空気銃で捕獲されたもののほうが肉質がいい傾向がある。
Noblesse Oblige提供
宮古島で防除されたクジャク。他の方法よりも空気銃で捕獲されたもののほうが肉質がいい傾向がある。

加藤さんは、クジャク肉の味について「肉の食味はキジに近いが、キジよりも肉付きがよくて味が濃く、ヒハツのような香りがある。よく走りまわるので脚がしっかりしていて旨味が強い。ただし腱が非常に硬いため、しっかり取り除く必要がある」と話す。

興味深いのは「肉にヒハツの香りがある」という点だ。ヒハツとは、コショウ科のつる性常緑樹で「島コショウ」と呼ばれることもある植物のこと。シナモンや八角のようなスパイシーで甘い柑橘系の香りが混ざった独特の風味があり、雑食のクジャクが野生のそれらを食べたのかもしれない。米とサーカスでも同じような話を聞いた。「特徴的なのは、むね肉のフローラルな香り。いい出汁が出る」と。残念ながら、その香りはクジャク鍋ではわからなかったが、料理法によっては感じ取れるのかもしれない。

ちなみに筆者が過去に体験した臭みは、保存状態以前に「皮にも原因があると思う」と、加藤さんよりヒントをもらった。クジャクは皮に臭みがあるため、美味しく食べるには、羽だけを抜くのではなく皮ごとまるっと剥くのがいいそうだ。

気になるクジャク肉の市場価格

クジャク肉は、精肉通販でむね肉等が1パック5000円前後、ジビエ専門店では鍋料理などで2〜3人前5000円前後で提供されている。

同じ鳥ジビエであるカモなどと比べると、インドクジャクは体格が大きく可食部(肉量)が多いので歩留まりが良く、グラム単位で見るとコスパに優れる側面を持っている。加藤さんの話では、マガモ1羽が約1kgであるのに対して、クジャク1羽は約2〜4kgほどだという。

しかし、捕獲地である沖縄離島からの輸送費がかかること、品質のバラつきにより在庫が不安定であることなどから、市場全体での流通価格は高止まりしているのが現状だ。「希少ジビエ」といえるだろう。

また飼育しているのではなく、根絶やしにするための防除が目的なので、国産の野クジャク肉はいずれ口に入らなくなる日が来る。そう思うと、ますます貴重かもしれない。