健康は目標ではなく幸せに生きるための道具

うまいように生きるためには、体と心とのつながりが大事だと考えてきました。ウェルビーイングという考え方です。

ウェルビーイングとは、病気をしないことが大事ではあるけれど、たとえひとつやふたつ病気があっても、自分の体と心を使ってやりたいことをやる「能力」が大事だ、という考え方です。

ウェルビーイングは特につながりを大事にしています。鎌田式身辺整理も、断ったほうがよいつながりは勇気を出して断ち、大切にしなくちゃいけないつながりは、育てて太く豊かにしていく。それがウェルビーイングになっていきます。

健康は目標ではなく、幸せに生きるための道具。そのために僕は身辺整理をして、上手に健康という道具磨きをしています。

70歳になったら、コレステロールは下げなくていいと思います。じつはコレステロール値が低いほうが、死亡率が高いのです。

これは、アメリカの約50の医学会が、「賢い選択(チュージング・ワイズリー)」として進めています。僕も外来で、70歳を超えた方には、「一度、コレステロールの薬はやめてみましょう」と言って、生活の注意をするだけにしています。

65歳は低血糖になるほうが臓器負担が大きい

高血圧の患者さんも、70歳を超えたときには、血圧の基準値を厳密に守るよりも、血圧の薬を少しずつ減らしていく努力をしていきます。

動脈硬化がある高齢の患者さんは、薬で無理やり血圧を下げたほうが、マイナスの点が多いからです。

70歳までは130/80ぐらいを目標にしていますが、70歳を超えたら150/90ぐらいに収まることを目標にしています。

糖尿病の患者さんは、75歳を超えたら、ヘモグロビンA1cの正常値(正常は6.2以下)を厳密に守らなくていいと思います。

65歳未満の糖尿病の患者さんでは、ヘモグロビンA1cは6.4ぐらいを目指していましたが、65歳ぐらいになれば、今度はヘモグロビンA1cは7.0でもOKです。低血糖になるほうが、臓器への負担が大きくなると考えるからです。

75歳以上になれば、ヘモグロビンA1cは7.2から7.4でもOKにしています。80歳を超えたり、要介護になったら、無理やり血糖値を下げるよりも、食べる楽しみを大事にしてあげたほうが、生きる意欲が出てくることが多いのです。

そんな場合には、ヘモグロビンA1cは7.5から8.0まで認めています。

ところで僕は、ドック検診を受けていません。

病院は退職していますが、週1回、予約外来の患者さんを受け持っているので、病院のアルバイト職員として、ドック検診を受けることをすすめられていて、痛くない検診だけ受けるようにしています。

胸のレントゲンと超音波検査と血液検査、それに心電図と、聴診器を当てる聴打診です。

検査中の手元
写真=iStock.com/Ekaterina Oleshko
※写真はイメージです

僕と同じ年の人でも、まだ一家を支えているとか、会社を経営しているとか、責任のある立場の人は、できたら人間ドックやがん検診を、きちんと受けておいたほうがいいでしょう。

年齢による検査の選択に関しても、その人の哲学や生き方によって変わってもいいと思います。