なぜ〈ことばの力〉が必要になるのか
私は絵本やアニメを否定する気持ちはまったくありません。私自身、児童書から漫画原作まで幅広く手がけていますし、その影響力を実感しています。グローバル市場では、日本のアニメが広く受け入れられている事実もあります。
しかしながら、そのことと、10代、20代の人たちがずっと子ども向けの本だけを読み続けることは別です。
本書『「ことばで伝える」ができない子どもたち』ですでに述べたように、成長するにつれ、人はどんどん複雑な言語空間に身を置くことになります。小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、あるいは新入社員、係長、課長、部長、社長……。年齢や地位が上がるにつれて、より細かな言葉で、複雑な課題に向きあわなければなりません。
そのため、〈ことばの力〉を伸ばすための読書も、年齢に応じて質を上げていく必要があります。中学生は小学生より質の高い読書を、大学生は高校生より質の高い読書を求められるのです。
年齢とともに上げていく「読書の質」
たとえば、小学生の低学年なら、『おしりたんてい』シリーズを、中学年から高学年なら『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』シリーズを読んでいれば、十分に必要な語彙力、情緒力、想像力、論理的思考力を育てていくことが可能です。それらの作品には、小学生にとってとても有益な内容が散りばめられているからです。
ところが、中学生や高校生になって、それらを読んでいても〈ことばの力〉は上がっていきません。
なぜなら、それらは小学生向けに書かれているので、中高生が新しく学ぶような言葉はほとんど使われませんし、思春期特有の複雑な感情が交錯する場面もないからです。また、日本にいてはなかなか想像できない海外の厳しい状況で生きる人々について学べるようなものでもありません。
そこでしなければならないのが、年齢が上がるにつれて読書の質も上げていくことです。中高生以上の子たちを対象に書かれた本であれば、そうした内容がふんだんに盛り込まれているのです。

