人格否定ではなく「建設的な議論」の可能性を信じたい
「自分の生活を広げていった先にあるのが政治」――そう語るのは、『「“右翼”雑誌」の舞台裏』を上梓した梶原麻衣子さんだ。保守メディアとされる月刊オピニオン誌『WiLL』や『Hanada』の編集に携わってきた。
「オピニオン誌が展開する憲法や安全保障の議論は大所高所の話で、自分には関係ないと思われがちです。でも、そうじゃない。女性がフェミニズムから間接的な恩恵を受けていることに無自覚でいるように、私たちの生活は実は政治によって支えられています」
ビジネスの世界において、政治の話題は忌避されがちだ。個人の生活や人格と密接に結びついており、政治的な意見を表明することで、時には自らの人格を否定される可能性すらあるからだ。しかし、「意見というのは批判を受けなければ建設的に発展させられません」と、梶原氏は全く臆することがない。むしろ、「右翼」とも呼ばれた自分たちの内実が理解されていないことに問題を感じていた。
「雑誌編集部がどういう論理で企画を立てているかが知られていないために、的外れな批判を受けることが多かったんです。『右寄り』ならまだいいほうで、『極右雑誌』といったレッテルありきで批判される。お金をもらって記事を載せているんだと言われることもありました。正しいと思っているから載せているのに、ですよ。批判を受けるならちゃんと批判されたい。そう考えて、自分が経験した編集部の内幕を一冊にまとめました」
SNS全盛の現代において、対立する人々のコミュニケーションはますます難しくなっている。
「SNSでは賛成か反対かをはっきりさせて、いち早く意見を表明することがよいとされがちです。意見の表明が仲間向けのメッセージになっているんです。でも、私は結論にいく前の話をもっとしたい。色々な事実や前提をわかったうえで物事を判断すべきで、条件反射的に結論を下す風潮とは距離を置きたいんです」
意見が異なる相手との対話を避けることもできる。それでも議論を続けるのは、相手の視点を理解すれば、意見の違いを超えて問題に取り組めると信じているからだ。
「言葉の回路が開けば、一緒に議論できることって沢山あるんです。例えばLGBTの方々が感じている問題について議論する際に、保守という人たちに『人権』という言葉で語っても響かない。でも、『同じ日本人の問題でしょ』と言えば少し響く。登山道が違うだけで、同じ山に登っている。異なる立場の人々の通訳をしていくのが、ライターの役割だと思っています」
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2025年3月21日号)の一部を再編集したものです。
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