急成長サイトの立役者が明かすメディアの裏側

「『いいものを作っているのに売れない』なんていうのは戯言たわごとですよ。どうすれば世の中に流通させられるのか、考えてないから売れないんです」

そう語るのは、「MINKABU(みんかぶ)」編集長を務める鈴木聖也氏だ。MINKABUは個人投資家向けのコミュニティサービスだったが、2022年に鈴木氏が編集長に就任し、ウェブメディアを開設。有料購読者数を急増させ、2年で黒字化した。

鈴木聖也
鈴木聖也
「MINKABU」編集長。1988年、群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、共同通信社入社、記者職に従事。その後、プレジデント社へ転職。2019年には「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞」デジタル賞を受賞。デスク業務を経て、22年より現職。

「競争が激しい環境では目立たないものは存在しないものと同じ。実際、サービス開始当初は記事を出しても全く反応がない時期もありましたね。どうすれば購読してもらえるのか、流通経路をいかに確保するかを考えてきました」

本書はMINKABUが参入したウェブメディア業界の舞台裏はもちろん、自社の商品やサービスにどうすれば人々の関心を向けられるのか、著者が自らのキャリアで得た知見を詳細に明かしている。

「新聞社にニュースを卸す通信社や、書店の棚に並べられる雑誌社と違い、ウェブメディアはまず存在を知ってもらうところから始めなければならない。メディアが置かれている市場の構造から逆算して、想定する読者から記事の書き方、テーマ設定まで、手法を変える必要があるんです」

タイトルには、多くの読者がウェブメディアに感じている問題意識を盛り込んだ。

鈴木聖也『最近のウェブ、広告で読みにくくないですか?』(講談社)
鈴木聖也『最近のウェブ、広告で読みにくくないですか?』(講談社)

「インターネットの技術は発展しているはずなのに、広告が増えるばかりで使いづらくなっていく。では、どうすればいいのか。広告なしでもメディアが成り立つのか、業界の内情を知らない人たちにも一緒に考えてほしかった」

SNSで個人も発信ができる時代に、メディアは明るい話題が多い業界ではない。新聞や雑誌の休刊だけでなく、ウェブでも次々に新しい媒体が登場しては消えていく。

「ジャーナリズムはもともと、日記をつける、という意味。毎日続いて、残ってくれないと困るんです。持続可能性があるメディアでなければ、ジャーナリズムを担う媒体として信用されません。有料購読者数を増やすことに注力するのも、利便性と持続可能性を追求してのことです」

自分たちが儲けるために読者の注意や切実さを醸成する技術を悪用しているのではないか。そんな批判もありうる。しかし、鈴木氏はメディア人としての矜持を語る。

(文=加藤圭悟(本誌編集部) 撮影=大槻純一)

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