「師匠に『増産のチャンスだ』って言われたんですよ。売れない可能性を考えてワインの生産を減らすワインメーカーが多かった。それでブドウが余り、ブドウ農家さんが困っていました。その状況でブドウをたくさん買えば、次の年からも優先して売ってもらえて生産数を長期的に維持できるという話です」
ターゲットは日本市場
コロナ禍にリスクを取った佐藤さんは、スワートランドの「Langkloof Vineyard」をはじめ、「優良畑」と言われる複数の農家と契約できた。
2022年は1万本、2023年は1万4000本とさらに本数を伸ばし、2024年以降は2万2000本を維持している。小規模生産者から中規模生産者への仲間入りだ。
しかし、ワインを増産できても、売れなければ生き残れない。2022年4月には南アフリカで史上最悪とも言われる洪水も発生し、物流が停止した。
「とにかく自分で動かないといけないと思いました。それで、輸入酒類卸売業免許や酒類販売業免許などを取得し、インポーターさんに頼らないで直接ワインを卸すと決めたんです」
佐藤さんは友人や投資家などから約2000万円を集め、2023年に株式会社Cage Wineを設立。「南アフリカ唯一の日本人醸造家」という肩書きを武器に、「Cage Wine」のターゲットを日本の市場に絞り込んだ。
現在は7割が日本、1割が南アフリカ、数パーセントがそれ以外の国で流通。保管して熟成させるためのワインも1割残している。
興味のあることを見つけるたび「佐藤商店」として主体的に取り組んできた佐藤さん。いまは自分が造ったワインを売り、言葉通りの「商い」をしている。
「次の、その次の世代のため」に
2017年に生まれた「Cage Wine」は、2027年で10周年を迎える。
「師匠に『ついに10回目の収穫だな』と言われて気付いたんですよね。僕が驚いた顔をしていたら『ケイジは数も数えられないのか?』とゲラゲラ笑われました」
佐藤さんは、株式会社Cage Wineの企業理念として「次の、その次の世代のため」をかかげている。
2026年5月には、樹齢40年以上のブッシュ・ヴァインの古木を未来に残すため、クラウドファンディングで目標の800万円を上回る金額を集めることにも成功した。ブドウ農家と長期契約を結び、ブッシュ・ヴァインの古木を守りながらワイン造りをするという。
いつかは自分のワイナリーをもちたいという夢もあるが、当分はこれまでどおり「A.Aバーデンホーストワイナリー」の設備を借りてワインを造っていく。「1人では限界もあるから」と言いながらも、佐藤さんが歩みを緩める気配はない。
「やらなきゃいけないことをやり続け、止まれないところまできたというのもありますけどね。やりたいことは、まだいろいろあります」



