39歳で本場の食とワインを知る旅へ
2016年6月に店を閉めた後、39歳の佐藤さんは1人でギリシャに向かった。ヨーロッパを放浪し、本場の食文化に触れながらワインの産地を巡った。
「食とワインをもっと知り、自分のコンプレックスを払拭するための旅です。あわよくば、ハーベストインターン(醸造体験)もして、ワイン造りの一連の流れを学びたいと思っていました。現地でテイスティングして食事して、ワインの醸造までやったシェフやソムリエなんていないだろうって。3年くらいかけてそこまでやったら、自分の強みになるはずだと」
たとえ醸造を経験できなくても、ワイナリーを見学してワインメーカーと交流すればコネクションになる。だからこそ、必ずキャリアアップできるという確信があった。
実は、佐藤さんは自分の店を開いた1年後に結婚している。繁盛していた店を閉め、妻子を日本に残して当てもない旅に出るという決断から並々ならぬ覚悟を感じ取れる。
ギリシャからヨーロッパに入ること以外、計画らしい計画はない。クロアチア、スイス、イタリア、フランス、ドイツ、ロンドンなどへ行き、ローカルな店を訪ねてひたすら飲み歩いた。気候や土地の特徴を肌で感じながら、それぞれの食べ物やワインについて理解を深めていった。
「頭をぶん殴られたような衝撃」
ヨーロッパのあちこちへ行って2カ月が経った頃、佐藤さんは南アフリカへ向かった。決して行き当たりばったりではない。
経営していたオレゴンワイン専門店では、オレゴン産以外も1割程度扱っていた。他のワインと飲み比べたいという客の要望に応えるためだ。
その1割のなかで、南アフリカ産の「Craven Wines」や「A.A. Badenhorst」などのワインを扱っていた。南アフリカワインを飲んだときの優雅で上品なやさしい飲み口が、佐藤さんにとって「頭をぶん殴られたような衝撃」だったという。
1659年から生産が始まった南アフリカのワインは1990年代後半に品質が劇的に向上し、現在は世界で高く評価されている。
日本から南アフリカまでは24時間かかるが、ヨーロッパからなら10時間程度。ワインのためにヨーロッパを旅するなら、どうしても南アフリカまで足を伸ばしたかった。


