経営層にルールを承認してもらうコツ

経営層が現場の提案を承認するかどうかは、単に「良い取り組みかどうか」「変革のテーマに整合しているか」だけでなく、経営にとってどのようなメリットや意義があるかによってシビアに判断されます。経営が現場のボトムアップ型の取り組みを承認する理由は、主に次の6つが考えられるでしょう。

(1)見えないコストの削減

経営からは見えにくいが、現場だからわかる企業に損失を与えている「見えないコスト」を指摘されると、経営は「これは対応しなければ」と感じてくれるでしょう。

(2)時代遅れリスクの回避

コーポレートガバナンス・コードや法制度の改正、あるいは社会の常識、価値観の変化に対し、自社の文化や風土が「時代遅れ」になりたくない、というのも、経営がルール変更を承諾する強い理由になります。ダイバーシティ推進やワークスタイルなどのルール変更が現場起点で通りやすいのは、まさしくこれにあたります。

(3)ブランディングの好機

先進的な取り組みや、社会的な意義のあるルール変更は、企業の外部へのアピール材料、すなわち「ブランディング」の絶好の機会となります。現場の提案を採用したという事実を材料にして、採用ブランディングや企業価値の向上に直結させたいというニーズです。

(4)戦略との整合・シナジー

組織変革のテーマと結びついているだけでなく、事業戦略や経営数値とシナジーがある場合も承諾の後押しになります。

(5)停滞打破・変革の火種

長期的な指針に合致しなくとも、現状に閉塞感が蔓延していて、「このままではまずい」「とにかく何か変化が欲しい」「マンネリを打破したい」というのもよくある経営のニーズです。その火種として期待ができる提案は、承諾される確率が高まります。

(6)文化醸成・エンパワメント

現場の自律的な取り組みが従業員の主体性や創造性を育み、組織全体のカルチャーを良い方向へ醸成すると判断される場合、エンパワメントやエンゲージメント向上を目的として「現場の声を採用する」ことがあります。

【図表】経営がルールデザインを承認する6つの理由とその類型
出典=安斎勇樹、水野祐『組織の成果を最大化する ルールのデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

まずは「見えないコスト」を見つけよう

安斎勇樹、水野祐『組織の成果を最大化する ルールのデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
安斎勇樹、水野祐『組織の成果を最大化する ルールのデザイン』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

あくまで「小さなアクション」が「変革のテーマ」に合致していることが前提条件ですが、現場としてはこれらの経営ニーズを理解し、自分たちの意見や取り組みをこの文脈に接続して語れるかどうかが、ボトムアップ型のルールデザインの成否の分かれ道となるでしょう。

特にボトムアップの組織文化がまだ根づいていない組織では、まずは(1)「見えないコストの削減」から狙っていくことが効果的です。どんな企業にとっても、ここが経営にとって最も直接的で、かつ緊急性の高い課題だからです。

コスト削減という「統制」の視点から着手し、「現場の声でルールが変わった」という小さな成功体験を積み重ねていくことが肝心です。そこから徐々に、他の象限に成功事例を戦略的に広げていくことで、組織は柔軟で変化に強い「ルールを更新していく組織」として進化していけるはずです。

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