議長就任なら1000万円、副議長なら500万円
発端は、一人の元議長の告発だった。2000万円を超える現金を要求され支払ったと暴露したのは、現在は無所属の吉松源昭氏である。カネを要求された日時、理由、場所、受け取った議員名を具体的に示したこともあり、福岡県のみならず全国に大きな衝撃を与えた。
受取人として名前が挙がった前述の中尾氏、松本國寛自民党福岡県連会長、原口剣生元県連会長らは授受を否定。だが、リスクを承知でカネを用意したと明かす吉松氏の言葉には真実味があるとの印象が勝り、マスコミによる自民党県議団幹部への追及は今も続いている。
カネには“相場”もあったという。「議長就任なら1000万円、副議長なら500万円」。複数の議員がそう証言している。実際、吉松氏と同時期に副議長を務めた江藤秀之県議は「副議長就任の際に500万円いると言われ、慣例だと思って手渡した」と会見で発言した。江藤氏に続き、他会派で副議長を経験した議員までもが、カネを払ったと記者たちに漏らし始めている。
彼らが本当に払ったかどうか、ここで断定はできない。だが、仮に払ったとすれば、なぜ唯々諾々と、要求されるがままに応じてしまったのか。そこには、自民党本部や国会議員にすら時に逆らう「自民党福岡県連(以下、福岡県連)」の存在があった。
地震発生直後に政治資金パーティーを開く
かつて自民党本部の指示に反旗を翻す地方組織があった。「東京都連」、「大阪府連」、そして「福岡県連」だ。東京は小池百合子都知事の誕生で、大阪は日本維新の会の台頭で、ともに弱体化した。しかし福岡県連だけは、その力を維持してきた。
2023年には福岡9区の支部長問題で、県連推薦の大家敏志参院議員を支部長に据えるよう自民党本部に迫り、県議らが本部へ押し掛けている。
ここで「福岡県連」と「自民党県議団」の違いについて整理しておきたい。今後、文中にも頻出するので、ぜひ押さえておいてもらいたい。
「福岡県連」とは福岡県の自民党組織全体を指す。国会議員や県議、市議などが加盟する、福岡県自民党の“表の司令塔”である。一方の「自民党県議団」は、県議会の中で自民の県議だけが組む会派だ。ちなみに、7月28日の熊本地震の発生直後に政治資金パーティーを開催したのは県議団会長の松尾統章氏である。
福岡県選出の国会議員は、特に麻生太郎氏(福岡8区)と武田良太氏(福岡11区)の考えが異なりまとまらないため、国会議員の候補者選定は実質、自民党県議団が握っている。
県議団はいわば“議会の現場部隊”ではあるが、県連の人事などにも強い影響を及ぼす。つまり、自民党本部に逆らうこともある福岡県連を実質的に支配しているのが県議団なのだ。
通常、県連会長は国会議員が務めるが、福岡では県議が長年務めている。こんな県は他にない。
今回、吉松氏にカネを要求したとされるのは、この県議団の幹部たちだった。


