「赤血球と抗体の大きさ」がカギになる

とまぁ確かにもっともらしい説明ですが、以上のシミュレーションは「赤血球だけ」輸血した場合です。

実際は血を丸ごと輸血するのですから、A型にはO型の血液を輸血出来て、O型にはA型を輸血出来ないのはおかしいはずです。どちらも最終的には、体内ではA型とO型が混ざっているのですから。A型に輸血したO型の血液からすれば、A型の血液成分はすべて異物なのですから、輸血したO型の血液が固まってもおかしくないはずです。

まぁ実際は技術が進歩した近年は赤血球だけを抽出して成分輸血することが可能ですが、昔は血丸ごとの輸血しかありませんでした。しかし、この場合でも輸血は出来るのです。

A型にO型の血液を輸血すれば、O型の血液に含まれている抗体が、元あったA型の血液に過剰反応して固まると思いますよね。

答えは、赤血球と抗体の大きさの差にあります。赤血球は抗体の1000倍以上の大きさがあり、全身を高速でめぐる血管中の血液では、分子レベルの抗体は素早く拡散されますが、赤血球はそれが出来ないのです。確かに大きくて重いものは溜まりますし、小さなものは激流で拡散されそうです。

「O型であれば万能」とは限らない

したがって、O型の人にA型の血液を輸血すると、あとから入ってきたA型の赤血球に、その場で抗体がどんどんくっついて大きな塊のようになってしまいます。一方、A型の人にO型の血液を輸血した場合、後から入ってきた抗体は素早く散らばり薄くなるために、A型の赤血球とくっついても大きな塊になることはないのです。

【図表3】A型とO型の輸血の違い
出所=『科学の教養大全』(Gakken)

とはいえ、大量に輸血した場合には、何かが起こるかもしれません。なので現代では基本的に同じ血液型の血液が輸血されています。O型は他の血液型に輸血出来る、というのは間違ってはいませんが、手放しでやって良いものでもありません。

では輸血の際は、このA・B・O・ABの血液型にさえ気をつければOKなのでしょうか?

実は人類と輸血の戦いはまだ終わりません。ラントシュタイナーがABO型血液型の発見でノーベル賞を受賞した9年後の1939年。O型の夫からO型の妻へ輸血した際、なんと異常な反応が起きた事例が報告されました。しかも驚くべきことに、1度目の輸血はなんともなかったのに、2度目で副作用が発生したのです。