なぜ「稼ぐ企業ほど狙われる」のか

中国において、なぜ稼いでいる企業ほど制裁の対象になりやすいのか。

理由は3つある。第1に、財源である。不動産不況で地方政府の土地譲渡収入はピークだった2021年からほぼ半減し、地方財政は逼迫している。罰金と没収は、増税より速く抵抗も少ない即効財源だ。

2024年8月に配信された日本経済新聞の記事によれば、中国の地方政府の罰金収入は2023年に8兆円弱と、10年で2倍超に膨らんだ。中国財政省の集計でも、2024年の罰没収入は前年比14.8%増と2桁の伸びを保った。

地方当局が管轄外の他省まで出向いて民営企業の資産を差し押さえる「遠洋捕撈(遠洋漁業)式」と揶揄される営利目的の法執行も社会問題化し、中央政府が是正の特別行動に乗り出す事態にまでなった。

この圧力もあり、罰没収入の伸びは2024年中に四半期を追うごとに鈍り、10〜12月期にはマイナスに転じた。乱獲へのブレーキは踏まれ始めたが、財政が罰金に頼る構造そのものは残っている。

第2に、統制である。巨大プラットフォーム企業は数億人分の決済、移動、宿泊のデータと世論への影響力を握り、共産党にとって潜在的な権力の競合相手となる。「大きすぎて党の言うことを聞かない」存在に育つ前に、序列を定期的に思い出させる必要があるのだ。

「見せしめ」による恐怖政治

第3に、見せしめである。業界最大手を過去最高の料率で罰すれば、残る各社は通達を待たずに自主的に恭順する。実際、アリババも今回のトリップドットコムも、不服を申し立てる構えすら見せなかった。反論すれば次に何が来るかを、全員が知っているからである。

3つに共通するのは、稼ぐ企業ほど、財源としても、統制対象としても、見せしめとしても「価値が高い」という倒錯した論理だ。当局は今回の摘発を、政権が2024年末から掲げる「内巻式競争の総合的な是正」や「常態化した監督」の一環だと説明する。

だが看板が何に変わろうと、摘発が景気後退局面に集中し、最も稼ぐ企業に向かうという規則性は変わらない。この国では、合法的に成功しすぎること自体がリスクになる。

政権も民営企業の重要性は百も承知である。中国政府自身、民営経済は税収の約5割、国内総生産(GDP)の約6割、都市部雇用の約8割を担うと繰り返し認めてきた。

2025年11月に配信された日本貿易振興機構(ジェトロ)のビジネス短信によれば、習近平国家主席は2025年2月の民営企業座談会で支援策の実施を指示した。5月には民営企業の権益保護をうたう「民営経済促進法」が施行され、11月には国務院が民間投資促進の13項目の措置まで打ち出している。座談会には馬雲氏らも顔をそろえていた。

中国の国旗を背景にスピーチ
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