「約3000億円の罰金」を科したことも
実は、中国では以前も企業に対する同様の制裁が下されたことがある。2021年4月、当局は電子商取引最大手のアリババ集団に、独禁法違反で182億元(当時のレートで約3000億円)の罰金を科した。
野村総合研究所・木内登英氏のコラムによれば、罰金は同社の2019年中国国内売上高の4%で、独禁法違反としては中国で過去最大だった。
問題とされた「二者択一」、すなわち出店者に競合サイトとの取引をやめさせる慣行も、長年公然と行われながら放置されてきたものである。同コラムは、新産業を当初は放任し、問題が深刻化してから管理を強化する当局の常とう手段を「先放後管」、いわば「後出しじゃんけん」と評した。
摘発の引き金も象徴的だった。創業者ジャック・マー(馬雲)氏が2020年10月に金融規制を公然と批判した直後、マー氏が実質的に率いていたアント・グループの史上最大規模の新規上場が突然停止されたのである。
以後、出前サービス最大手の美団に独禁法違反で約34億元(2021年)、当局の慎重論を押し切って米国上場を強行した配車最大手の滴滴出行にデータ関連法違反などで約80億元(2022年)と処分が続き、「共同富裕」の号令の下でアリババとテンセントはそれぞれ1000億元規模の拠出を表明させられた。
今回の罰没総額は、中国のネット大手への行政処分としてはアリババ、滴滴、アント・グループに次ぐ4番目の規模である。独禁法違反に絞れば、アリババ、2015年の米クアルコム(約61億元)に次ぐ3番目にあたる。
景気が減速し、政権が財源と統制を必要とするタイミングで、稼ぎ切った企業が事後的に標的となる。トリップドットコムへの処分は、5年前に確立された型の忠実な反復である。
民間投資は減り、外資はピークの4分の1
こうした統治の代償は、すでにマクロ統計に刻まれている。中国国家統計局が1月に公表した統計によれば、2025年の全国固定資産投資は前年比3.8%減、うち民間固定資産投資は6.4%減だった。
2月28日に配信された日本経済新聞の記事によれば、投資全体に占める民間の比率は、統計をさかのぼれる2013年以降で初めて50%を割り込んだ。国有が民間を押しのける「国進民退」は、もはや傾向ではなく統計上の事実である。
外資の萎縮はさらに鮮明だ。2月に配信された共同通信の記事によれば、国家外貨管理局が公表した2025年の国際収支統計で、外資の対中直接投資は765億ドル(約11兆7000億円)だった。
記録的な低水準だった2024年の186億ドルからは持ち直したものの、ピークだった2021年の3441億ドルと比べれば4分の1以下にとどまる。
投資とは、将来のルールが予見できるという信頼への賭けにほかならない。6年間黙認された商慣行が、ある日突然、売上高の7.5%の罰金に化ける国で、リスクを取って規模を追う経営者は着実に減っていく。民間投資と外資の統計は、内外の経営者による集合的な「回答」なのだ。

