稼ぎ頭を直撃した約1250億円の「鉄槌」
まず、当局の説明から事件を再構成しよう。国家市場監督管理総局(SAMR)が7月25日に公表した処分の概要によれば、トリップドットコムは2020年以来、中国国内のオンラインホテル予約市場で支配的な地位にあった。同社は提携ホテルを「特牌」「金牌」「無牌」の3等級に格付けし、そのうえで2種類の独占行為に及んだ。
第1に、最上位の「特牌」ホテルには最大限の集客支援と引き換えに独占提携を求め、競合する予約サイトとの取引を放棄させた。SAMRの調査によれば、この独占提携の実施率は90%を超えていた。
第2に、「金牌」「無牌」のホテルには「全ネット最安値」を義務づけ、契約でホテルの価格を直接書き換える権限まで握った。「金牌」ホテルに課された条件は、他サイトより20元、または販売価格の5%以上安くすることである。
他サイトの価格は常時監視され、高値が見つかれば「調価助手」などのツールで自動的に引き下げられる。従わないホテルには、検索露出の制限や、預けさせた保証金の差し引きという罰が待っていた。
処分は4本柱で構成される。違法行為の停止命令、ホテルから強制的に差し引いた保証金1億2200万元の全額返還、違法収益16億5800万元の没収、そして2025年の中国国内売上高469億5800万元の7.5%にあたる罰金35億2100万元だ。
“共産党の機関紙”が名指しで批判
中国のオンライン旅行業界に対する独禁法摘発の第1号案件であり、プラットフォーム企業から違法収益の没収にまで踏み込んだのも初めてである。SAMRは、トリップドットコムの行為が業界の「内巻式競争」(値下げ合戦による消耗戦)を激化させたとまで非難している。
翌26日付の中国共産党機関紙・人民日報は、「トリップドットコム独占案の摘発は反独占・反『内巻』の強烈なシグナルを放つ」と題した論評を掲げた。過去最高比率のこの罰金は全プラットフォーム企業への警告であり、どんな独占も「反独占の利剣」からは逃れられない。そう宣言する内容である。
会社側は「誠実に受け入れ、断固として従う」と即日恭順した。問題の「調価助手」に至っては、処分に先立つ今年3月、当局の指導を受けて取り下げていた。
トリップドットコムは世界220以上の国・地域で予約サービスを展開し、日本人の海外旅行にも、訪日客を待つ日本の宿にも深く食い込んでいる。中国国内の一件として片づけられる話ではない。

