「25%超の手数料」に苦しんだ民宿経営者
公平のために言えば、認定された行為そのものは国際的にも問題視されてきた類型である。「自社サイトを含むどの販路でも、この予約サイトより安く売ってはならない」とホテルを縛る条項は、最恵国待遇(MFN)条項ないし価格同等性条項と呼ばれる。後発サイトが安値や低い手数料を武器に挑戦する道を塞ぎ、競争を凍結させる仕掛けだ。
ドイツの連邦カルテル庁は2015年、宿泊予約世界大手ブッキングドットコムの最低価格条項を禁止した。欧州連合(EU)の司法裁判所も2024年9月、この種の条項は当然に適法とはいえず、個別に競争制限性を審査すべきだとの判断を示している。日本でも公正取引委員会が2019年、楽天トラベルなど宿泊予約サイト大手3社を独禁法違反の疑いで調査し、楽天は同等性条項を修正した。
被害の実態も生々しい。7月27日付の新華社通信の記事は、「トリップドットコムでの販売価格は他のチャネルより低くせよと求められ、手数料は当初の10%程度から一部の部屋で25%超に上がり、純利益は5%に満たない」という雲南省大理の民宿経営者の証言を紹介した。
中国メディアの取材でも、複数のホテル関係者が、調価助手は事業者の確認なしに客室価格を書き換え、「下げるだけで、上げることはない」ツールだったと証言している。
米欧日の当局が現に取り締まり、事業者の悲鳴も本物である以上、今回の摘発を「言いがかり」と切り捨てることはできない。それでも、本質的な問いは残る。違法かどうかではなく、いつ、誰に、どの強さで法を適用するかが、当局の胸三寸で決まっているのではないか。
その寡占を育てたのは当局自身だ
問いを解く鍵は、時系列にある。トリップドットコムの市場支配には、当局公認とも言うべき形成史があるからだ。
2015年10月、同社(当時シートリップ)は中国検索最大手の百度(バイドゥ)との株式交換で、最大の競合だった旅行検索大手の去哪児(チューナー)を実質的な支配下に置いた。百度はトリップドットコムの筆頭株主となり、オンライン旅行市場は事実上の一強体制になった。
当局はこの統合に待ったをかけなかった。当時の中国は「互聯網プラス(インターネット・プラス)」を国家戦略に掲げ、プラットフォーム企業の膨張を成長の起爆剤として後押ししていたからである。
当局自身が「2020年以来」と認定した違法行為は、つまり6年間放置された。2015年に完成した一強の寡占にいたっては、10年間、国の独禁執行が一度も触れていない。SAMRが重い腰を上げたのは、苦情や告発が相次ぎ、2025年に貴州省当局が約談(呼び出し指導)し、鄭州市当局が改善命令を出した後の、今年1月14日のことである。
太らせるだけ太らせておき、経済が減速して財政が苦しくなった局面で、過去にさかのぼって「乱用」を認定し、稼ぎに比例した罰金を徴収する。これは競争法の執行というより、収穫期を国家が選ぶ「刈り取り」に近い。この時系列にこそ、「企業いじめ」と呼ぶべき本質がある。

