人事院による改革を阻む各省庁
だが、膨大な財政赤字を抱える中で(高市内閣はこれも大した問題ではないと感じているようだが)、政府が大盤振る舞いし、官僚組織を肥大化させて、本当に民間活力は生まれてくるのか。
2021年に民間人の女性として人事院総裁になった川本裕子氏は公務員の待遇改善や制度改革に取り組んできた。マッキンゼー・アンド・カンパニーや早稲田大学大学院で民間企業の経営改革戦略などに携わってきただけに、公務員が能力を発揮し、それに応じて評価される仕組みにこだわりはある。例えば一定の資格等級に留まる期間を定めていた「在級期間表」を廃止することで、年次主義を廃した抜擢人事がやりやすくなったとされる。
ところが、最終的な運用は各省庁に任されているため、改革はあまり進んでいない。民間企業では当たり前の能力主義をとろうにも、各省庁の抵抗が激しく、実現が難しいのだ。ボーナスでの業績評価の加算制度などもあるが、実際にその制度を使って評価するかどうかは省庁次第だ。総裁の他に2人いる人事官に4月に新たに就任した菅原晶子氏も経済同友会事務局などで公務員制度改革に携わってきた人物だ。川本総裁とタッグを組んで改革に取り組むとみられるが、高市内閣の主要課題にはなっておらず、公務員制度改革が全省庁で進むかどうかは未知数だ。
「官業」は失敗を繰り返してきた
人口が本格的に減少し始める中で、中央官庁の国家公務員は何をどこまで担っていくのか。まったくと言ってよいほど議論はない。待遇を改善すれば、当然、総人件費は増えていくし、組織が増えれば公務員の数もなかなか減らない。民間企業でも人手不足が深刻化する中で、本来は民間でできることは民間にやらせる方が、経済合理性は高い。物価の上昇で税収は大きく増えているが、だからといって公務員の数や給与を増やしていけば、かつて言われたような「官尊民卑」の構造に再び戻りかねない。公務員の肥大化が進めば、財政悪化につながるだけでなく、民業を圧迫し、民間の活力を失わせることになりかねない。
民間企業の力が弱っているのを底上げしなければ、日本の国力の衰えも回復できない。どうすれば民間企業が強くなるのか。国が手助けして資金を投じることが民間を強くする道なのか。これまでにも「官業」は失敗を繰り返してきたし、昨今でも「クールジャパンファンド(海外需要開拓支援機構)」の失敗例もある。
国が手を貸すのではなく、民間企業がより自由に活動し、競争に勝っていけるよう規制を撤廃することの方が民間を強くするのではないか。給与増や待遇改善などの小手先の改革にとどまらず、国は何をすべきかという原点に戻って、公務員制度の何を変えるべきか、考える時だろう。


