トップに立たないことが現代の戦略
秋元は自身の来し方を振り返って、「運のドミノ倒し」と言う。構成作家からスタートして作詞家、とんねるず、美空ひばり、おニャン子クラブ、AKB48グループと連鎖していくなかでシナリオを書き、映画を撮り、本を書く。
さらに、セガが開発したドリームキャストや、日本郵政公社(現・日本郵政グループ)の「手紙ドキドキプロジェクト」の総合プロデューサーに就任したり、文部科学省がグローバル人材育成事業の一環として実施した官民協働の海外留学創出キャンペーン「トビタテ! 留学JAPAN」をプロデュースしたりするなど活躍の場を広げていく。
2022年、秋元は紫綬褒章を受章する。秋元の言う「運のドミノ倒し」は「水平志向」において成り立つものであることがわかるだろう。
これまで会社や組織にあっては、出世を目指す「垂直志向」が是とされた。だが現代は、経営陣が経営責任を問われ、株主訴訟で莫大な損害賠償を請求される時代になった。「垂直志向」には相応のリスクがついて回ることから、変化が激しく先行き不透明な現代は「名」より「実」に価値観がシフトされつつある。
この処し方が、リスクを避け、現在地を起点として横へ横へと活躍の場を広げていく「水平志向」であり、「責任ある立場」は足枷になってしまうのだ。
かつてトップに立つために用いた「寝業」は、現代にあっては「トップに【立たないため】」「責任者にならないため」の戦略であり、私たちが秋元から学ぶ処世術なのである。


