一過性の“もろさ”
「令和ホルモン」と「凛々堂」での経験を通じて、僕は“バズ”というものが持つ二つの側面を目の当たりにしました。
一つは、威力の強さです。うまく利用できれば、ただの焼肉店が観光客が行列をつくる「大阪ランチの定番スポット」に生まれ変わります。新規参入のスイーツ店を流行らせ、猛烈な勢いで全国展開させることもできます。バズの圧倒的なパワーを、二つの業態で身をもって体感しました。
ただ、バズにはもう一つ、目を背けてはならない一面があります。それは、コントロールの難しさです。SNSの特性をしっかりと学び、それに合った施策を打てば、一定の確率でバズを起こすことは可能です。ただし、不確定要素が大きいのもまた事実です。
来てほしい人にだけ来てもらう、というのはかなり難しい。意図したのとは違う方向に拡散していく可能性が高いのです。
コントロールが利かなくたってかまわない、と思う方もいるかもしれません。バズでお客さんが押し寄せて、儲かるんだったら、事業者側のコンセプトと多少ズレていたって別にいいじゃないか、と思われるかもしれません。
しかし、僕が経験的に思うのは、それでは長続きしないということです。バズに引き寄せられてくるお客さんは「一度体験してみたい」という欲求が満たされると満足しやすいのです。すでに期待値が相当上がっているので、実際のサービスでそれを上回ることが難しい、という一面もあります。
事業者側もそれをわかってくると、強気の価格設定にするなどして、リピートをあまり期待しなくなります。590円から2490円まで値上がりした「令和ホルモン」のステーキ丼がいい例です。
ビジネス成功に最も大切な“唯一のこと”
結果、お客さんとお店・ブランドの間には、ごく浅い関係性しか生まれません。半永久的に新規客が供給され続ける超有名観光地などであれば、それでいいかもしれません。でも、そうではない場合、バズは一過性のブームとして過ぎ去っていくのです。
大きな波に飛び乗ったはいいけれど、その結果、商品やサービスは短命に終わってしまう。
そんな事実に僕は気づき始めていました。最大で全国23店舗(直営6店舗)にまで急拡大した「凛々堂」ですが、その売上はみるみる落ちていきました(現在は2店舗に縮小)。その要因は「飽きられた」という一言に尽きます。バズに支えられた“もろさ”を露呈した形です。
僕の心には、成功したという実感はなく、不完全燃焼の思いがありました。
「凛々堂」のビジネスに、事業としての完成度も再現性も見出せていなかったからです。こんな、砂のお城のような結果で終わりたくない。次こそは、一過性のブームではなく、自分自身が心から納得できる「本物」をつくりたい。そう強く願い、僕はまた新たな挑戦に向けて歩み始めました。





