集客力抜群の“これなに動画”
わずか2か月ほどだった準備期間にも、TikTokを中心に、SNSでの発信を続けていました。その一つが“これなに動画”です。
フルーツ大福とSNSの相性のよさの一つに、「タコ糸で大福をカットする様子が面白い」というものがあります。大福にタコ糸を一周巻きつけ、縛るようにして半分に切ると、きれいな断面が現れるというわけです。
“これなに動画”とは、僕が「これなに、これなに?」と歌いながらタコ糸で大福を切る動画のこと。
視聴者は「中に何が入っているのかな」「どんな断面が現れるのかな」というのが気になって、つい最後まで見たくなる仕掛けです。
そうやって動画の視聴時間を長くすると、バズにつながりやすくなります。実際“これなに動画”は数十万回の再生数を稼ぎ、フォロワーの増加に大きく貢献しました。広告費はゼロ。SNSの特性を生かせた実例だと思います。
その成果は、開店当日に表れました。まだまだコロナによる外出自粛の雰囲気が強かった中にあって、お店の前には約30人もの行列ができていたのです。
フルーツ大福に賭けた僕の第二の挑戦が、こうして始まりました。
接客ライブ配信で熱狂的ファンが続出
フルーツ大福に大きな可能性を感じた僕は、一気にシフトチェンジを進めました。
東京で1号店を開店した翌月の2020年12月には、コロナの影響でほぼ稼働できない状況だった「令和ホルモン」を閉店。お店だった場所をフルーツ大福の工場として利用し始めました。
そこで商品をつくり、知り合いの飲食店の前で路上販売させてもらいました。テーブル一つの簡素な“2号店”でしたが、大通りに面していたこともあり、よく売れました。やはりそれも、目を引くビジュアル、パッと見で「おいしそう」「食べてみたい」と思ってもらえる商品力があったおかげだと思います。
勢いはさらに加速し、出店が続きます。2022年には「凛々堂」は、FC店も含めて全国19店舗まで拡大しました。
手間をかけずに多くの客にリーチできる
これほどの勢いが生まれた背景には、やはりSNSの力がありました。特にTikTokを継続的に活用して、タコ糸で大福を切る“これなに動画”も出し続けました。当初ほどは再生されなくなったとはいえ、それでも3000回は再生される。ほとんど手間をかけずに3000人にリーチできるわけですから、やる意味は十分にあると考えました。
また、商品を並べたディスプレー棚を移した映像に「どれが食べたいですか?」という字幕をかぶせた動画なども投稿。こうしたコンテンツはユーザーからの回答コメントを誘発することでエンゲージメント(愛着度)が上がり、バズにつながりやすくなります。
TikTokを活用した施策の中で、とりわけ顕著な成果を生んだのが、店員による接客の様子をライブ配信する試みでした。
当時、実際の接客の様子をライブ配信している唐揚げの屋台があり、好評を博していました。それを参考にして「凛々堂」でもやってみることにしたのです。
直営店で始めてみたところ、配信を視聴してくれるお客さんがどんどん増えていきました。店員さんはあくまで一般人ですが、単純接触効果で、その人の顔を繰り返し見ているうちにファンになっていくものです。
また、店員さんには若い女性が多かったこともあり、アイドル的な要素も掛け合わさって、熱狂的なファンがつくようになりました。この接客ライブ配信に取り組んでいた頃は、ファンの方々のパワーの凄まじさを見せつけられました。
たとえばライブ配信で、店員さんが「今日は雨なのでお客さんが少ないです」とちょっと悲しそうに話すと、わざわざ店に駆けつけ商品を大量に買ってくれるファンの方が現れたり。ギフティング(投げ銭)で1カ月に20万円も稼ぐような店員さんが現れたりもしました(利益は店舗と折半することにしていました)。
また、店を辞めることになった店員さんの最終出勤日に全国から数十人ものファンが集まり、店内がプレゼントでいっぱいになったこともありました。
バズによって想定と異なる客層が増えた
僕自身も店員さんも、最初は楽しみながら接客ライブ配信を行っていましたが、人気が高まったことでいろいろな弊害が出るようにもなってきました。
たとえば、配信を通してファンになってくださったお客さんが、お店の近くで出待ちをするようになったり、店員さん個人のSNSにプライベートなメッセージが届くようになったり。そうした事態を受けて、店員さんの安全管理を含めたマネジメント業務の負担が大きくなっていきました。
また、「令和ホルモン」がそうであったように、お店がもともと想定していたのとは異なる客層がバズによって増えた結果、ターゲットとしていた客層がお店に近づきにくくなる、という状況が生じつつありました。
フルーツ大福は、40代以上の女性層が本来のターゲットでしたが、ライブ配信でファンになってくださったのは主に男性でした。


