若い頃は「自分」しか書けなかった

【角田】たぶん私の中で、小説を書くこと=考えることなんですね。日常で考えたいこととは違うんです。それこそデビュー作から、家族って何、血縁である必要って何、みたいな疑問があって、それを考えたくて書いていた。書きながら考えても答えは結局出なくて、それには慣れてるんですけどね。そういう、小説を書かないと考えないことはかなりあって。なので私の場合、考えたいことがなくなった時が書けなくなる時だと思うんですよね。

【東畑】自己模倣に陥ったとおっしゃった時期は、ちゃんと考えることができなかったなという感覚なのですか?

【角田】純文学の雑誌で書いていたときは、年が若かったせいもあって「自分」しかないんですよ。当時、書くことで考えたいときは、自分の中を見て、一生懸命掘り出すみたいな感じだったんです。だけど、文体を変えてエンターテインメントを書くというときに同時に気づいちゃうのが、自分をこれ以上見てもなにも出てこないぞってことなんですね。行き詰まるだけだという。