今の30、40代も昔と同じ問題を抱えている

【角田】家族の問題だと、たとえば1990年に20代の人間が、家族ってそんなに大事かなとか、血縁の家族のなにが本当なんだろう、もっと緩やかなつながりでいいんじゃないかって一生懸命考えていたとして、7、8年後には世の中が変わって、誰もそんなに血縁、血縁言ってない、みたいな状況になっているわけですよね。今はもう、家族観が35年前とは全然違うと思うんですよ。そうすると、前に考えてたことはもう昔になったというか。

【東畑】ああ、確かに。そうですね。世界が変わっていく。

【角田】対岸の彼女』は、女性同士の友情って、子どもを産むとか産まないとか、働くとか働かないで変わっちゃうの? みたいなことを考えたいと思って書いたんです。この時は働く女性と専業主婦の対立がやけに目立つ社会でしたが、いまは男性も育児するようになったり、専業主婦が少なくなったりで、もう女性同士で罵倒し合ったりなんてしてないだろうと、もう終わったと思っていました。

でも最近、三宅香帆みやけかほさんと対談をしたら「SNSでまだやってますよ」って言われてびっくりしちゃって。私と同世代の人たちが、たんに年齢的にその問題を通過しただけというか、今の3、40代のリアルを私が知らなかっただけみたいです。

「書きたくても書けない」がわかるようになった

【角田】だからこの本、実はずっと売れていてありがたいんですけどね。だいたいの問題は私が考え終わる前に状況が変わってるんですけど、中には、時代は変わったと勝手に思っていたのに、「えっ、まだやってんの?」みたいな(笑)、「まだテーマなの?」みたいなものもあるかな。だから、自分の中で自然に終わっていくことはないような気がします。変わっていくものはあるかもしれないですけど。

【東畑】今のお話は1つは納得で、家族も働き方もどんどん変わっていくし、考えることは無限に出てくる、問題自体は次々と生まれてくる。それはそうだと思いました。でも、一方で、一人の人が無限に新しいことを考え続ける、謎と向き合い続けるって、すごく難しいことじゃないかなとも思うんです。

頭を抱えているビジネスマン
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一人の人には1つのスタイルがあって、1つのスタイルで扱えるものには限界があるような気がするんですよね。謎は無限に生じ続けるが、こちらは有限。たとえるなら、持ってる包丁が一定だから、切れる謎は切れるんだけど、切れない謎も出てきちゃう。じゃあ切れるものを切っていこうというふうに、普通はなるかなと思うんです。その点、角田さんはどうでしょうか。謎はどんどん出てくるけど、角田包丁は……。

【角田】やっぱり新しくはならないですよね。包丁は包丁なので、切れるものと切れないものがあって。そもそも、私の目がいく対象が狭いんですよね。宇宙とか全然興味ないですし。これ書きたいな、考えたいなと思っても、絶対無理なものはもうわかります。

【東畑】はい。