それから、子どもが16歳になったら1人の人間として扱い、お互いリスペクトしあえる関係を築くことが大事です。ただし、これはけっこうたいへんですよ。帰宅するやいなやパンツ1枚になって、その格好のままビールを飲んだり、休日にジャージ姿でごろごろしていたりでは、とくに女の子からはなかなか尊敬してもらえません。

その点しっかりしているのがイギリスのお父さん。中流以上の家庭だと、いつ来客が来ても対応できるよう、家でも常にちゃんとした身なりをしています。実は日本も戦前まではいつも着物できちんとしていた。ところが、戦後アメリカ文化が入ってきて、家ではTシャツに短パンが当たり前の世界になってしまったのです。

子どもの尊敬を勝ち取る手段としては、一緒にスポーツをするのもいいですね。でもその神通力が通用する期間は長くありません。私はスキーとテニスが得意だったので、ことあるごとに子どもと勝負しては、親の威厳を誇示してきました。ただし、ある時期から勝てなくなって2つともやめてしまった。いま一緒にやるのはゴルフ。これはまだ勝てますからね。

そうやって一生懸命子育てをしても、年頃になれば反抗期はやってきます。親のいっていることを頭では理解できても、どこか鬱陶しく感じて逆らったり、距離を置きたくなったりする時期というのは自分だってあったわけですから、これは仕方ないと思ったほうがいいでしょう。それに、心配しなくても時期がくれば、子どもというのはちゃんと親のところに戻ってきます。

いまは息子も娘も成人しました。2人とも自分の人生をマイペースで歩んでいるようです。自分の子育てを振り返ると、少し頭でっかちすぎたかなという気もしますが、親の敷いたレールに乗ることをよしとせず、自分でレールを敷ける人間に育ったので、70点はもらえるのではないでしょうか。

明治大学国際日本学部学部長 
蟹瀬誠一 

1950年、石川県生まれ。米AP通信、仏AFP通信記者、TIME誌東京特派員、TBS、TV朝日キャスターなどを経て現職。