取扱商品もホビーやプラモデル、旅行用品など増加の一途をたどり、かつ自社物件への出店の駒として「石井スポーツ」を傘下に収め、スポーツ用品の売り場も飛躍的に拡張した。そして、2019年に梅田ヨドバシに大阪・梅田の店舗に併設して開業した「LINKS梅田」では、「GU」「ユニクロ」「ニトリ」「ABC-MART」などのテナントを誘致、各フロアを埋めている。
もはやヨドバシカメラのフロアは相当な比率で「脱・家電」であり、店内も電器屋さんというより「複合商業施設」「テナント経営者・デベロッパー」といった印象が先に来る。だからこそ、広大で細長い西武池袋本店を取得したうえで、どのスペースでも収益を生める商業施設に転換できたのだ。
家電以外にほぼ手を出さないビックの“諸刃の剣”
一方でビックカメラは過度な投資を行わず、東京・有楽町や大阪・なんばなどの旗艦店も賃貸のまま。池袋の本館や各店舗でも、ヨドバシと共通する「家電以外」はホビー・スポーツ用品(いずれもヨドバシより小規模)くらいであり、専門外であるレストラン街などに手を出していない。全体的に「電器屋さんは電器屋さん」のまま、ここまで来たようにも見える。
積極策に出る革新的なヨドバシと、石橋をたたいて渡る保守的なビック。そう見える社風の背景には、ヨドバシ・藤沢昭和氏、ビックカメラ・新井隆二氏といった創業者の経営スタイルもあるだろう。
社長がすでに長男・藤沢和則氏に継承されているヨドバシは、株式非公開のままとあって、投資を決断する経営スピードも迅速そのもの。池袋と同時に千葉そごう・ジェンヌ館のヨドバシ化(ヨドバシカメラ マルチメディア千葉の移転。2024年11月開業)も進め、この後には旧・名鉄百貨店への限定出店、札幌の新幹線駅化に伴うヨドバシ主導の再開発ビルも、1667億円を投じて建設中だ。
この環境の中で、フォートレスからの「約3000億円」という物件取得の打診に数日で受託の返答をしたという。ヨドバシ=藤沢家のこういったフットワークの軽さは、並大抵の企業が持てるものではない。
一方でビックカメラは、2代目以降は叩き上げの社員や関係者に社長を任せ、株式公開による資金調達で安定成長を続ける。家電以外にほぼ手を出さない社風から推測すれば、おそらく「西武池袋本店が売却される」と聞いても手を出さなかったと思われ、フォートレスもそれを分かっていて、ビックカメラではなくヨドバシに声をかけたのだろう。
最高の立地でも課題山積
では、ヨドバシカメラはあっさりと、池袋でビックカメラを駆逐できるのか? ホームエリアである池袋を盗られることで、ビックカメラは縮小の道を歩むのか? ……結論から言うと、そう簡単な筋書きを歩むわけがない。



