「日本一の百貨店」半分がヨドバシに

ではなぜ、ヨドバシ池袋がこんな場所にオープンしてしまったのか? 数年にわたって大きく報じられたので、ご存じの方も多いだろう。きっかけは、「西武百貨店の運営会社(そごう・西武)の外資ファンド傘下入り」だ。

左側に「SEIBU」(西武)右側に「ヨドバシカメラ」の看板。かつては全面が「SEIBU」だった
筆者撮影
左側に「SEIBU」(西武)右側に「ヨドバシカメラ」の看板。かつては全面が「SEIBU」だった

1940年からこの地で営業を続ける「西武池袋本店」は、バブル期の1982年には単独で年間2749億円という脅威の売上を誇り、まぎれもなく「日本で一番売れる百貨店」であった。

しかし、コロナ禍で地方店舗が軒並み不採算となったあおりを受けて、運営会社である「そごう・西武」が2020年度から赤字に転落。池袋本店はまだまだ競争力を保っていたにもかかわらず、米投資ファンドの「フォートレス・インベストメント・グループ」(以下:フォートレス)にたった2200億円で売却されてしまい、うち池袋西武本店を含む主力物件が、約3000億円でヨドバシに売却されてしまった。

異業種のままなら家電量販店・百貨店で競合も発生しなかった池袋西武本店が、あれよあれよという間に売却されて、建物がヨドバシ所有となったうえで、北半分がヨドバシ化、南半分には西武池袋本店がテナント入居する形で残った。

しかも、ビックカメラ方面に流れそうな人流をピタリと止めそうな、JR・地下鉄の改札に直結した場所に店がある……池袋の“ヌシ”としての立場を長らく維持してきたビックカメラにとっては、想定外にも程があるだろう。

2000年代初頭から続く「陣取り争い」

ただ、駅前・カメラ系量販店同士としての「ヨドバシ・ビック」の抗争は、いまに始まったことではない。

ヨドバシカメラ 新宿西口 マルチメディア館
筆者撮影
ヨドバシカメラ 新宿西口 マルチメディア館
奥に見えるのが小田急ハルク。ベックカメラがテナント入居している
筆者撮影
奥に見えるのが小田急ハルク。ビックカメラがテナント入居している

両社とも全国各地で一等地の確保に力を注ぎ、2000年代初頭の大阪進出では、ヨドバシが梅田・キタエリアのJR大阪駅北側を買収、ビックが張り合うように難波・ミナミエリア(百貨店「プランタンなんば」跡)にテナント入居。“キタvsミナミ”地域間競争も相まった激しい商戦を繰り広げたのも、記憶に新しい。

首都圏でも八王子・川崎・大宮などで、ヨドバシ・ビックが至近距離で競合。地方でも福岡市で「先発の天神ビックを後発の博多駅ヨドバシが猛追」、京都市で「ヨドバシの京都駅前出店に追いやられて先発のビックが完全閉店」など、各地での集客戦争の激化は、留まることを知らなかった。

その中で、聖域として守られてきた「ヨドバシは新宿、ビックは池袋」の勢力図が変わったのは、2002年のこと。ビックカメラが小田急百貨店(小田急ハルク)の5フロアを借りる形で、ヨドバシ創業地の目の前に「ビックカメラ新宿西口店」をオープン。2012年には東口にも進出し、「新宿=ヨドバシ」の構図を、ビックカメラが一気に塗り替えようとしたのだ。