睡眠薬の使用は「最終手段」に
50代、60代と年齢を重ねるにつれて、不眠の悩みを抱える方は増えていきます。
しかし、眠れないことを過度に恐れ、すぐに薬に頼ってしまうのは、血管と脳の若さを保つ観点からは非常に危険な選択。不眠を訴える方の多くが、安易に睡眠薬(睡眠導入剤)を服用しており、診察室でも処方を希望される方が少なくありません。しかし、私としては睡眠薬の使用は「最終手段」にすべきだと考えています。
睡眠薬は脳の活動を強制的にシャットダウンさせるため、長期間の服用は、思考能力の低下、意欲の減退、さらには転倒による骨折のリスクを高めます。特に中高年において「最近、元気がなくなった」「物忘れが増えた」と感じている場合、実は薬の影響であるケースも少なくありません。
まずは生活習慣を見直し、自力で眠る力を取り戻すことが、脳の若さを守ることにつながります。
そこで本稿では、私が日ごろから実践し、眠れない悩みを持つ患者さんにもお伝えしている「池谷式不眠対策法」の極意をお伝えしましょう。
血管と脳を若返らせる不眠対策法
不眠解消極意1 「8時間熟睡」へのこだわりを捨てる
まず知っておいていただきたいのは、「年齢とともに睡眠の質と時間は変化するのが当たり前」という事実です。
若い頃のような「泥のように眠る」感覚は、体力の低下や基礎代謝の変化に伴い、自然と薄れていきます。夜中に目が覚める、あるいは早朝に目が開いてしまうのは、体が以前ほど長い休息を必要としなくなっている「自然な証拠」でもあります。
「眠らなければならない」という強迫観念そのものがストレスとなり、血管を収縮させ、さらなる不眠を招くという悪循環に陥っている方が少なくありません。
多少眠りが浅くても、日中に強い眠気で支障が出ない限りは「これが今の自分のリズムだ」と、おおらかに構えることが快眠への第一歩です。
不眠解消極意2 就寝2時間前には「絶食」する
血管を休ませ深い眠りに入るためには、寝る2時間前には食事を終えることが必要です。胃の中に食べ物が残った状態で眠りにつくと、体は睡眠中も消化活動を続けなければならず、内臓が休まりません。
また、消化のために血液が内臓に集中するため、脳や全身の修復に必要な「深部体温の低下」が妨げられ、眠りが浅くなってしまいます。夕食は早めに済ませ、「空腹での就寝」をすることをおすすめします。

