「強い防衛スイッチ」が入るメカニズム

実は、運動をして息が上がると、一時的に体内の「活性酸素」は増えます。「えっ、じゃあ運動すると血管がサビちゃうの?」と思いますよね。でも違うんです。

運動によって一時的に「ちょっとだけサビの原因(敵)」が増えると、体は「ヤバい! 敵が来た! サビ取り部隊を増強しろ!」と強い防衛スイッチを入れます。その結果、運動で増えた活性酸素の量をはるかに上回る量の「抗酸化酵素」が体内で大量につくられるのです。

あえて弱いウイルスを体内に入れて、強い免疫をつくる「ワクチン」の仕組みによく似ていますよね。いわば、運動は「血管の酸化を防ぐワクチン」なのです。

定期的に適度な運動を続けることで、この「サビ取り部隊(抗酸化酵素)」が常にスタンバイしている状態をキープできるようになります。そうなれば、血管がサビず、しなやかで若々しい状態を保てるようになるというわけです。

笑顔で走っている若い女性
写真=iStock.com/maroke
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血管の構造を太く、たくましくする

運動には、一時的な血流アップで血管を広げるだけではなく、血管の構造そのものを太く進化させる効果もあります。

例えば、有酸素運動をすると全身の筋肉にたくさんの酸素を運ぶために、心臓からポンプのように血液が勢いよく送り出されます。このとき、血液が血管の内側の壁(内皮細胞)をこするようにザアザアと流れます。

道路で例えると、急に交通量が増えて、車が道路の端っこギリギリをビュンビュン走っているような状態です。

この物理的な摩擦の刺激が数週間〜数カ月と定期的に繰り返されると、血管の内側の細胞はこう学習します。

「毎日こんなにすごい激流が来るなら、今の細いパイプのままじゃいずれ耐えられなくなる! もっと太くて余裕のある道に作り変えよう!」

こうして、血管の細胞を増やすためのスイッチ(成長因子などの物質)がオンになり、本格的な血管の「拡張工事」のサインが出されるというわけです。

指令を受けた血管の壁の中にある筋肉(平滑筋)やコラーゲンなどの組織が細胞分裂をしたり、配置を変えたりして、自らを新しくつくり変えていきます。その結果、血管の直径そのものが物理的に太く、立派に進化します。

これが「血管のリモデリング」です。

単にゴム管がビヨーンと引っ張られて伸びているのとは違い、細胞レベルで再構築されて「2車線の道路が、4車線の立派な幹線道路に生まれ変わる」ようなイメージです。

この進化(血管の太径化)が起きると、運動していない安静時にもさまざまなメリットが得られるようになります。通り道が太くなるので、心臓が無理な圧力をかけなくてもスムーズに全身へ血液が巡るようになって血圧が下がったり、心臓が「省エネモード」で働けるようになったり。

また、広い道路を通って、隅々の細胞までたっぷりの酸素と栄養が届くため、日常的なスタミナがアップして疲れにくくなるのもメリットです。