「エアコン普及率は3%」という試算も

2023年3月公表の国際エネルギー機関(IEA)の分析は、エアコンを使える環境が2019~2021年に年間約19万人の熱関連死を防いだと推計している。冷房は電力を使い、排熱も増やす。だからこそ、高効率機器、断熱、遮熱、安定電源を組み合わせ、命を守る冷房を持続可能にする必要がある。

冷房がなければ、独居の高齢者、基礎疾患のある人、介護施設の入所者が先に追い詰められる。電力は発電所で完結しない。最後は、高齢者の部屋のエアコンまで届いて初めて安全保障になる。冷房インフラは、福祉政策であり、都市政策であり、電力政策でもある。

ドイツの冷房普及率には定義の差がある。2022年7月20日に配信された米ワシントン・ポストの記事は、業界推計としてドイツの住宅用エアコン保有率を3%と紹介した。

エアコン
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一方、2024年6月に配信されたドイツのエネルギー専門メディア「クリーン・エナジー・ワイヤー」の記事では、ドイツでエアコンを使う世帯が2023年の13%から2024年に19%へ増えたとされる。保有、使用、設置のどれを数えるかで数字は変わる。それでも、欧州の住宅が米国や日本ほど冷房を前提にしてこなかった事実は明確である。

「エアコンを使わない美徳」が命を削る

欧州の建築文化には理由がある。冬の寒さに備え、熱を内側に保つ住宅が多かった。

ロイターは、欧州の住宅が熱を外へ逃がすより保持する方向で造られてきたことを指摘し、欧州の家庭のエアコン保有率は約25%にとどまると伝えた。日本や米国との差は、安全保障上の差へ変わりつつある。

断熱、日射遮蔽、反射材、自然換気、都市緑化といった受動的冷却(パッシブ・クーリング)は重要だ。エネルギー消費を抑え、都市の熱を下げる効果もある。過去のドイツの気候であれば、冷房なしの生活にも一定の合理性があった。問題は、気候の前提が変わった時に、住宅文化と電力政策を更新できるかである。

40℃級の猛暑で、受動的冷却だけに頼れば、高齢者、低所得者、持病のある人が最初に危険にさらされる。冷房を使える人と使えない人の差が、命の格差になるからだ。環境への配慮は必要だが、「エアコンを使わないこと」を美徳にしすぎれば、脆弱な人ほど我慢を強いられる。