そのため、彼女は「助けてください」と何でもかんでも任せてくるような人に対しては、非常に慎重だ。
単に要求を呑んで甘やかすのは、本当の支援ではない。その人が本当に支援を必要とする状態なのか、どうすれば行政の適切なサポートに繋ぎ、自立へ向かわせることができるのかを冷静に見極める必要があるという。
「制度の網の目から漏れてしまう人」と「制度にただ寄りかかろうとする人」――。この二者が交錯するL字型の食堂に、多くの人々が命綱を求めて集まってくるという事実。それが、行政のセーフティーネットだけでは賄いきれない、日本の貧困の現実なのだろう。
「とにかく食事と安心を届けたい」
学校給食がなくなる夏休み、子どもたちの食事と居場所を守るため、上野さんは公民館で無料の弁当配布会「まぜこぜ食堂」を開催している。
前編で触れた通り、4000食以上を提供するこの大規模なイベントに、上野さんは「しんどい家庭の子も、そうじゃない子も、みんなが『まぜこぜ』になって集まれる場所が必要。夏休みに行き場をなくす子どもたちに、とにかく食事と安心を届けたい」という強い思いを抱いて臨んでいる。
日々の店舗運営に加え、夏休みの大型イベント、さらには絶え間なく持ち込まれる困窮者からの相談業務を一人で受け止める。時には解決方法がわからない問題に頭をかかえるという。
その過酷な日々の中で、溢れそうになる感情や出来事を整理するために上野さんが密かに活用しているのが、「生成AI」だ。
彼女はAIを親しみを込めて、「チャッピー(ChatGPT)」「漫才の相方」と呼ぶ。
日々の活動で起きたことや、自分の心の中に溜まったモヤモヤとした感情をそのままAIに入力する。文字にして可視化し、AIと対話を重ねることで、「自分の思考が客観的に整理され、次にすべきことが見えてくる」という。時には異なるAIも活用して、意見を戦わせる時もある。
孤独になりがちな支援活動の中で、AIを感情の壁打ち相手として利用するのは、今の時代ならではだろう。


