一番の理想は亡くなるときに「資産ゼロ」

これ、けっこうリアルです。じつは、「自分のお金を自分のために使う」というのは、思っているより難しい。いざ使おうとすると、「これでいいのかな」と迷う。有効に使うってどういうこと? と立ち止まる。それに、通帳の残高が減っていくのはやっぱり怖い。いつまで生きるかわからないのに、数字が減るのを見るのは、なかなかのストレスです。

でも、だからといって生活の質を落としてまで使わないのは、本末転倒ではないでしょうか。これからは、少しマインドチェンジが必要です。「死ぬときに資産ゼロでもいい」むしろ、それを目指すくらいでちょうどいいのかもしれません。

お金を墓場まで持っていくことはできません。だったら、生きている間に「生き金」として使う。自分の生活を豊かにするために使う。経験に使う。健康に使う。人との時間に使う。そのほうが、きっと後悔は少ないはずです。老後不安の9割は、お金が「減ること」への恐怖です。

でも、本当に怖いのは、「使わないまま終わること」かもしれません。せっかく積み上げたお金です。最後は、自分の人生を豊かにするために、ちゃんと使い切りましょう。

退職者コミュニティで自撮りをしながら楽しんでいる陽気な先輩
写真=iStock.com/Drazen Zigic
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節約と引き換えに失った人間関係

内閣府の「経済財政白書」(2024年度)によると、金融資産は60~64歳でピークを迎え、平均1800万円超になるそうです。

「やっぱり退職金が入るから増えるんだな」と思いますよね。でも、もっと興味深いのはその後です。85歳をすぎても1500万円超を保有していて、減少率はわずか15%ほど。……え? ほとんど減っていない。つまり、多くの人が「老後資金」をあまり使っていないということです。せっかく老後のために貯めたお金なのに、です。

もちろん、慎重になる気持ちはわかります。でも、「使わなかったことで生まれる不幸」もあるんです。いくつか、よくある話をしてみましょう。Cさんは、近所の電気屋さんでエアコンを買いました。取り付けまでお願いして、いざ支払いのときに「ちょっと高すぎるんじゃない?」と値下げ交渉。たしかに、家電量販店と比べれば割高だったのかもしれません。

でも、そのひと言で電気屋さんの機嫌を損ねてしまい、それ以降なんとなく疎遠に。それまでは、電球が切れればすぐ来てくれたし、ちょっとした不具合も気軽に頼めた。顔なじみの安心感があった。数千円、数万円の節約と引き換えに、その関係を失ってしまったとしたら……。どちらが得だったのでしょうか。