肌だけでなく臓器にも悪影響を及ぼす
さらに過食によって慢性的な炎症が続くと、内臓の組織が線維化して硬くなり、臓器としての機能が次第に失われていきます。
代表的な例が脂肪肝で、高脂肪の食生活によって肝臓に脂肪が蓄積し、炎症が強まって線維化が進むと、肝硬変に至ることもあります。血糖値が高い状態が続くと腎臓にも負担がかかり、腎臓組織の炎症や線維化も進行してしまいます。
一方、周期的なファスティング模倣食(FMD)や断続的なファスティングは、体重・内臓脂肪・血圧・炎症の度合いといった“老化関連リスク因子”を改善できることが報告されています(※3)。少なくとも血管や臓器を「休ませ、修復モードに入れる」ことは、全身の健康維持にとって理に適ったアプローチだと言えるでしょう。
※3:Wei, M., Brandhorst, S., Shelehchi, M., et al. (2017). Fasting-mimicking diet and markers/risk factors for aging, diabetes, cancer, and cardiovascular disease. Science Translational Medicine, 9(377), eaai8700. PMID:
Brandhorst, S., Levine, M.E., Wei, M., et al. (2024). Fasting-mimicking diet causes hepatic and blood markers changes indicating reduced biological age and disease risk. Nature Communications, 15(1), 1309. PMID: 38378685
アンチエイジングといえば、脳の老化をいかに防ぐかも大きなテーマです。
脳の機能は積極的に使えば使うほど強化されます。しかし適度に休ませることも大切です。筋肉が負荷と休息の繰り返しで強くなるのと同じように、脳も適切な負荷と十分な休息(睡眠)を与えることで機能は向上しやすくなります。
ファスティングは認知機能の低下も抑える
偏った食生活による脳への影響は、他の臓器や血管への影響と同様に深刻です。
主に動物実験では、過食、とくに高脂肪食や糖質の過剰摂取は、脳内で酸化ストレスや慢性炎症が高まることが示されています。神経細胞の働きや、記憶を支えるシナプスの機能が乱れることも報告されています。
さらに、遺伝子の“使われ方”を調整するエピジェネティクスという仕組みにも影響を及ぼします。脳で本来働くべき遺伝子の使われ方が乱れることで脳の老化を加速させてしまう可能性も指摘されています。
逆にファスティングは、脳の代謝環境を整えることで、認知機能の維持に役立つ可能性が示唆されています(※4)。
※4:Phillips, M.C.L. (2019). Fasting as a therapy in neurological disease. Nutrients, 11(10), 2501. PMID: 31627405
アルツハイマー病については、動物モデルでは一定時間食べないという条件を設けることで、アミロイドβの蓄積減少や記憶力向上を示す報告が多くなされています。ヒトにおいてはまだ小規模な研究が進みつつある段階です。
一例を挙げると、ヒトを対象とした研究では、規模の小さい研究ながら時間制限ファスティングで血糖値を下げるインスリンの効きがよくなり、記憶テストのスコアが改善したという報告があります(※5)。アルツハイマー病モデル動物でFMDを試したところ、認知機能低下を抑える可能性が報告されています。ヒトでも、安全性と実効性を確認する試験が進められています(※6)。
※5:Ooi TC, Meramat A, et al. Intermittent Fasting Enhanced the Cognitive Function in Older Adults with Mild Cognitive Impairment by Inducing Biochemical and Metabolic changes: A 3-Year Progressive Study. Nutrients. 2020 Aug 30;12(9):2644. doi: 10.3390/nu12092644. PMID: 32872655; PMCID: PMC7551340.
※6:Rangan, et al. (2022). Fasting-mimicking diet cycles reduce neuroinflammation to attenuate cognitive decline in Alzheimer’s models. Cell Reports 40(13), 111417. PMID: 36170815.
Zhao, y., et al. (2025). Time-restricted feeding mitigates Alzheimer’s disease-associated cognitive impairments via a B. pseudolongum-propionic acid-FFAR3 axis. iMeta 4, e70006. PMID: 40236783.
Elias, A., et al. (2023). Effects of intermittent fasting on cognitive health and Alzheimer’s disease. Nutrition Reviews 81(9), 1225-1233.
Racette, S.B., et al. (2025). Time-restricted eating in Alzheimer’s disease: TREAD pilot trial design.
※糖尿病を含む基礎疾患がある方、治療中・服薬中の方、妊娠中・授乳中の方、成長期の方、摂食障害のある方またはその既往がある方、その他健康状態に不安のある方は、本書の方法を自己判断で行わず、必ず医師に相談してください。



