瑞巌寺が震災に耐えた驚きの理由

しかし、筋交いを入れることで、横のずれを防ぎ、上下に押しつぶされる力に耐えられるようになるのだ。瑞巌寺の他、法隆寺や姫路城などにも、この筋交いが数多く用いられているため、現在まで倒壊を免れているというわけである。

1596(文禄5)年に慶長伏見地震が発生している。京都を中心とした畿内を震源とする内陸直下型地震で、推定でマグニチュード7.5以上、震度6程度の地震と考えられている。この地震で伏見城天守などが崩壊し、石垣も崩れ、500人以上が圧死するなど、死者は1000人を超えたとされる。

地震は京都を中心とするものだったが、瑞巌寺創建の大工の棟梁は上方から連れてきたという。おそらく慶長伏見地震の経験がこのとき活かされたのだろう。そして、「平成の大修理」中だった瑞巌寺を2011(平成23)年の東日本大震災から守ることになったと推察される。

東京スカイツリーと隅田川
写真=iStock.com/XIA JIN
※写真はイメージです

スカイツリーの「心柱制振」とは

東京スカイツリーが建物の揺れを抑えるしくみは「質量付加機構」といい、このしくみを使った地震対策は「心柱制振」とよばれる。五重塔がこれまで地震による倒壊例がないのは、やはり心柱に理由があると推定される。そこで、五重塔の心柱の精神に敬意を表して「心柱制振」と名づけられたという。

スカイツリーは、高さ634メートル、自立式電波塔として世界一の高さを誇り、鉄骨を組んだタワー塔体内側に、直径8メートル、高さ375メートルの鉄筋コンクリート製の円筒(心柱)が立っている。

スカイツリーでは中心を階段室という非常階段が貫いているが、これがスカイツリーの心柱で、展望台の部分とつながっている。また、心柱とまわりの鉄骨でできた塔体とはオイルダンパーでゆるくつながっているのだ(図表5)。

【図表5】東京スカイツリーの心柱
出典=『サイエンス日本史』、イラスト作成=ウエイド

オイルダンパーとは、オイルが入ったシリンダーとピストンで構成された筒状の装置で、地震や風などの揺れを吸収するしくみだ。地震や強風の際、心柱(階段室)が塔体とは違う動きをし、揺れを打ち消しあう。心柱(階段室)を付加質量として加え、塔体とタイミングがずれて振動するようにしてある。揺れを軽減する度合いは、地震で最大5割、強風で最大3割だという。

古代の高層建築に使われた心柱の精神が、千年以上の時を経て、最新の現代建築にも「心柱制振」という新しい言葉になって残ったということだ。

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