生産拡大を阻むライセンス問題
その筆頭が、末澤さんが率いるOrchard&Technology株式会社だ。次稿で詳しく紹介するが、ポイントは、脱「匠の技」とオリジナル品種の栽培である。
まず高齢化による担い手不足を補うために、職人技だったキウイ栽培をAIなどを用いて「誰でもできるもの」に変え、さらに効率化させる工夫で、地域の協力農家とともにグループで年間30〜40トン規模のキウイを生産している。オリジナル品種については香川県産オリジナル品種を用いて付加価値を高めている。
しかし、さらなる拡大を考えたときにネックになるのが、同社が主力として栽培する「さぬきキウイっこ」や「さぬきゴールド」など、県オリジナル品種のライセンス問題だ。これらは香川県が独自に改良を行い育成者権(ライセンス)を持っている品種であるため、県外での栽培が原則として認められていないのである。
末澤さんは次のように指摘する。
「自治体が県民の税金を使って品種を開発している以上、県の農家や利益を最優先に守らなければならないのは当然です。しかし、そのために農業が『タコツボ化』しやすく、拡大しないという構造的な問題があります。各都道府県が小さなマーケットを抱え込んでいる間に、外国がグローバルスタンダードを押さえに来ているのです」
攻めの知財戦略が必要だ
ゼスプリは、自国に優良品種を抱え込むのではなく、ブランドや種苗の権利を管理しつつ、あえて海外の生産者へ公式ライセンスを供与している。
たとえば、ニュージーランド産が出回らない時期にもスーパーの棚をキープし続けるため、イタリアなど北半球の農家に種苗と栽培技術を提供して委託生産させている。日本進出もその一環なのだ。
こうした種苗販売やライセンス事業単体の収益だけでも今や500億円以上にのぼると言われており、その利益は株主であるニュージーランドの生産者に還元され、さらなる新品種開発の原資となる強力なエコシステムを築き上げているのだ。
その一方で、自社の品種「サンゴールド」などが中国で無断栽培された際には、徹底的な訴訟と厳格なコントロールで防衛している。自社のルールや品種を「グローバルスタンダード」にするため、世界規模での知財覇権争いを強力にリードしているのである。
ニュージーランドゼスプリのビジネスを学べば、日本の農業の未来戦略は明確である。それは国内市場での産地間競争という消耗戦からの脱却であり、標準化、規模拡大、人材育成、オールジャパンでのビジネス展開である。後編では、稼げるキウイビジネスを実現する末澤さんの取り組みを紹介する。


