「こんなん野球界の問題ちゃうねん!」

松原や選手会長の古田敦也らの訪問を受けたときのことを、瀬戸山が思い返す。

「彼ら曰く、コミッショナーもオーナーも門前払い。瀬戸山のところくらいしか行く場所がない、ということだったのでしょう。選手会側がアクションを起こした本当の始まりだったと思う。彼らは『合併を1年間凍結し、その間に選手会も交えた話し合いの場を作ってほしい』と強く訴えていた」

選手や裏方スタッフの雇用に直結する球団統合を、現場への説明なしに「密室」で進めることは筋が通らない。経営が成り立たないのであれば、相応の猶予を設け、当事者である選手も交えて議論すべきではないか――。

選手会の主張は真っ当であり、瀬戸山自身、現場を無視して強行突破を図る球界の現状に強い疑問を抱いていた。なればこそ、意を決して根來泰周コミッショナーのもとへ足を運んだ。

当初、根來の反応は穏やかだった。共に関西出身とあって、「あんまり立ち入らんほうがええよ」と優しく諭した。

だが、瀬戸山はしつこかった。「これは球界全体で解決すべき問題ですよ。このまま放置して一体どうするつもりですか」。正面から言葉を重ねるうち根來は激高。こう言い放った。

「こんなん野球界の問題ちゃうねん。商法上の問題や。あんたに法律のことなんか分かれへんやろ!」

東京高検検事長などを歴任した、法曹界の重鎮としてのプライドがのぞく強烈な一言だった。「それ以降、根來さんは口をきいてくれませんでした」と瀬戸山は苦笑する。

「1リーグ10球団制」を印象付けた会議

水面下の動きは報道によって徐々に表面化し、世間を巻き込み始めていた。世論の風向きを決定づけたのが、7月上旬に立て続けに起きた2つの出来事だ。

まずは7日のオーナー会議。直前にライブドアが近鉄買収へ名乗りを上げたことに加え、西武オーナーの堤が26年ぶりに出席するとあって、会議は異様な注目を集めていた。

会議室
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その席上で衝撃的な発言が飛び出す。堤が突如「もう1組の合併が進行中」と明かしたのだ。「西武、ダイエー、日本ハム、ロッテ。どことどこが一緒になれるか模索している」。オリックス・近鉄に続く合併となれば、パ・リーグは4球団に減る。堤の発言は、「1リーグ10球団制」への移行が既定のレールに乗ったことを世間に強く印象づけた。

この発言は単なるブラフであったことがのちに判明するが、堤がそうした言動に至った背景について、瀬戸山はこう見立てる。

「いっこうに進まないロッテ側の動きにしびれを切らし、早くしろとプレッシャーをかけたのではないか」

事実、瀬戸山のもとにはダイエー本体社長の高木邦夫から「ロッテとは一緒にならない。150%ない」と釘を刺す電話が入っていた。「密室」主導の合併プランは、完全に膠着状態に陥っていたのだ。