「台湾を支持する」と言っただけで逮捕?
近年、欧米を中心に、企業がサプライチェーンを通じて海外の人権状況に影響を及ぼしていないかを確認・対応する「人権デューデリジェンス」の重要性が強く認識されるようになってきているが、もし実施すれば民族団結法で制裁、サプライチェーンを移転すれば出国禁止が課される。
これはもはや通常のビジネスリスクではなく、「蟻地獄」である。
一度中国投資に踏み込んだ企業は、抜け出そうとするたびに底なし沼に引きずり込まれる。すでに中国から撤退する自由すら奪われたと考えるべきだ。
見落としてはならないのは、民族団結法は台湾問題とも密接に絡み合っていることだ。
法文は「中華民族共同体意識」の強化を中心に据え、香港・マカオ・台湾、海外華僑までを一体で規律する構造になっている。台湾の独立を支持する言動は、この法律の下では「民族分裂主義活動」として処罰対象になりうる。日本人が台湾支持を表明することも、理論上は第63条の射程に入る。
台湾への武力統一を視野に入れる習近平政権にとって、民族団結法は「台湾統一の正当化」と「外国からの反発の封じ込め」を一体で達成するための法的基盤でもある。
7月1日以降、日本企業に迫る経営判断
2020年、香港に国安法が施行されたとき、世界は制裁より経済を選んだ。その「不作為の代償」が、今日の民族団結法だ。
これは単なる規制圧力だけの話ではない。民族団結法の施行によって、中国でのビジネス継続と国際基準への対応の両立が、構造的に不可能になる局面が現実味を帯びてくる。
ウアルカイシ氏(天安門事件の元学生指導者)は、事件37周年にあたる2026年6月4日の東京でのイベントでこう述べた。「日本も中国の脅威に対する最前線に立つときだ」。まさにそのとおりの国際環境が整いつつある。
7月1日、第63条が有効な法律として存在し始める。「言論の自由」と「対中経済関係」のどちらを優先するのかという問いは、今や企業経営者にとっての経営判断の問題でもある。
経営判断を先送りし続けた企業が、「中国に投資したことによるコスト」の大きさにあとで気づいても、もはや手遅れだ。
民族団結法とは、習近平が「思想の長城」を世界規模で築こうとする試みだ。その長城の内側に自社を置き続けることは、もはや「ビジネスリスク」ではなく「経営の存続リスク」を意味するようになりつつある。
別記事で述べたが、これからの企業経営者には、地政学的な知見と、そこから導かれる速やかな判断が強く求められる。中国の危険性を認識し、地政学的な情報に常に敏感になっておく必要がある。


