強制労働の実態調査に高いハードル

民族団結法の施行が、日本企業にとって深刻な「二重の罠」を生み出す構造を理解しなければならない。

一方には、アメリカによる「ウイグル強制労働防止法」がある。これは、新疆ウイグル自治区からの輸入品が強制労働で生産されたものではないと企業が明白に証拠を示すことができない限り、同自治区が関与する産品の輸入を原則禁止するものだ。この法律に従うには、日本企業はサプライチェーンを徹底的に調査しなければならない。

だが他方、民族団結法はそれに対する「反撃」の道具として機能する。中国の工場での強制労働の可能性を調査しようとすれば、今度は中国から「民族分裂を扇動する行為」と認定される可能性がある。

この構造はすでに反外国制裁法によって先行して整備されていた。外国企業などは、アメリカなどの中国に対する制裁措置の要請(処罰リスク)と、中国での損害賠償リスクの「板挟み」になるおそれがある。民族団結法は、この「板挟み」の対象範囲を人権問題全般に拡大する。

投資を歓迎する一方、出口を封じる

さらに深刻なのが、反外国制裁法に基づき日本企業を「反制裁リスト」に掲載することがありうる点だ。

リストに掲載された場合、中国国内資産の差押え・押収・凍結、国内組織や個人との取引・協力の禁止または制限、個人の場合は入国禁止・査証取消・国外追放などの措置がとられる可能性がある。反制裁リストに掲載された企業は、防衛関連部門以外のあらゆる事業に影響を被ることになる。

ウイグル問題を取材・報道する記者や研究者、関連する国会決議に賛成した議員、新疆綿を含むサプライチェーンの調査を行う企業など、これらのすべてが「民族分裂を扇動する行為」と認定される可能性がある。

綿花畑で手作業の収穫を行うウイグルの労働者たち
写真=iStock.com/rweisswald
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習近平政権は、そこにさらなる網を被せようとしている。

2026年3月31日、李強首相は「産業チェーン・サプライチェーンの安全に関する国務院の規定」(国務院令第834号、全18条)に署名し、4月7日に公布・即日施行した。

この規定によれば、規制当局はサプライチェーンの移転を進める企業を調査する際、従業員を尋問したり企業の記録を検討したりできる。さらに外国企業が本国の圧力でサプライチェーンを他国へ移転したと疑われる場合、該当する企業や個人の中国からの出国を禁止できる。

中国は、入口では「投資せよ」と誘い込みながら、出口では「出ていくな」と封じるのだ。