他店で断られた靴が最後にたどり着く場所

「今年は1月〜5月上旬の間に、すでに500件近くの依頼が来てます。どれもプロが修理を断るような、ひと筋縄ではいかない靴です。うちは定額料金を設けていません。同じ靴でも壊れ方が違いますし、お客さまそれぞれが求める理想像が違います。それらを聞いてから部材選び・工賃を算出するため、数万円のものから数十万円かかるものまであるんですよ」

どのような靴にも対応できるよう多様なパーツをそろえている
筆者撮影
どのような靴にも対応できるよう多様なパーツをそろえている

インタビュー中、村上さんの口から出た数十万という金額に思わず声が出た。しかしどれも持ち主の記憶や愛着が宿った特別な靴で、購入価格を上回る修理代を投じる客は珍しくないのだという。

ここは他店で「もう直せません」と断られた靴が最後にたどり着く、いわば「靴の駆け込み寺」。なぜ個人経営の修理店が減り続ける時代に、この小さな工房は世界中から選ばれているのだろうか。