「ちょこちょこ歩き」は転倒リスクの予兆
つまり、「慣れた自宅だから安心」「このくらいの段差は大したことない」という油断こそが、最も危険なのです。
ここで、ぜひ覚えておいてほしいことがあります。高齢者の転倒は、「運が悪かった事故」ではありません。多くの場合、老化によってつくられた「転びやすい体」が招いた結果なのです。
その変化は、日々の「歩き方」にも表れます。歩幅が狭くなり「ちょこちょこ歩き」になっている場合は、転倒のリスクが高まっているサインです。逆に、大きめの歩幅で「スタスタ歩き」ができている人は、筋力やバランス能力が維持できている可能性が高いでしょう。
歩幅の違いは、そのまま将来の転倒、さらには寿命にも関わってくるのです。
しかし、「転びやすくなってしまった体」は、正しい知識と行動により変えることができます。次からは、転倒を防ぐために、「何を」「どの順番で」整えていけばいいのかを具体的にお伝えしていきます。
最悪の場合、要介護・寝たきり状態になる
普段の生活の中で転ばずに歩けている。実はこの「当たり前」は、リハビリテーションの分野で重視されている「人の活動を育む」という考え方の、まさに土台にあたります。転ばずに歩ける=単にケガをしないというだけではありません。要介護・要支援や寝たきり状態になるリスクを下げ、元気で自立した生活を続けるための大前提でもあるのです。
ここでひとつ、あらかじめ整理しておきたい大切なポイントがあります。それは、これまでお伝えしてきた「老化に伴ってリスクが高まる転倒」とは異なる種類の転倒があるということです。
マンガの中で見るような「バナナの皮を踏んで、ツルッと滑って転ぶ」、そんな場面を想像してみてください。このようなタイプの転倒の原因は、床の滑りやすさ、段差、照明の暗さなど、いわば「環境によるもの」です。これは年齢に関係なく、若い人でも環境が悪ければ誰にでも起こりうる転倒です。
一方で、本稿で扱う「老化によって起こりやすくなる転倒」は、これとは意味がまったく異なります。筋力やバランス能力、姿勢を保つ力など、体そのものの変化が原因となる転倒です。
環境を整えることももちろん大切ですが、高齢者の転倒はそれだけでは防ぎきれません。床や段差、照明など、環境的な問題を減らすための具体的な工夫について、次から詳しくご紹介します。

