「JAが在庫を増やして、米価を上げた」

2024年の夏にスーパーの棚からコメが消えたのは、前年に収穫された23年産米が40万トンほど猛暑などの影響を受けたからである。その分を24年産新米から先食いしたため、農家がJA農協を通じて販売する24年産米の価格(60kg当たり玄米)は、前年の1万5000円から2万5000円に70%上昇した。供給が減ったので価格が上がった。経済原則の通りだ。これは天災だった。

ところが、25年産米はさらに上昇して3万6000円となっている。しかし、これは猛暑などの天災による影響ではない。25年産米の生産量は前年産に比べて1割、70万トンも増加しているのに、圧倒的な市場支配力を持つJA農協が、在庫を増やして市場への流通量を制限し、米価を上げたのだ。今年4月のJA農協を含む民間在庫は249万トン、過去10年間で最高の水準だ。これによってJA農協は卸売業者に販売するコメの価格(相対価格と言う)を3万6000円に引き上げたのである。

【図表】長期的な主食用米の価格の動向
グラフ=農水省HPより

公正な市場がないコメ取引

JA農協がこのような価格決定を行うことができるのは、コメについては、野菜や果物などの卸売市場のように自由で公正な市場がないからである。

かつては、公正なコメの価格形成の場として入札制度による全国米穀取引・価格形成センター(前身を含めると1990年から活動)が存在し、1997年産米では落札量が103万トンにも達していた。セリで値段が決められる卸売市場では、JA農協も独占的な力を発揮しようがない。コメのセンターも同じような役割を果たしていた。

しかし、2004年の食糧法改正によってJA全農の上場義務が廃止された(編集部注:米流通の原則自由化を目指して、これまで上場義務が課せられていたことを廃止した。この改正には批判的な意見がある)ことを利用し、米価を高く維持したいJA農協は、同センターへの上場をやめ、卸売業者との相対取引に移行した。

このため、同センターの利用が激減し、センターは2011年3月廃止となった。JA農協が5割を超える市場占有力を持って、規模の小さい卸売業者と相対で取引すれば、米価に強い影響力を行使できるのは当然だった。それがJA農協の狙いだったのだろう。

コメが市場になじまないのではない。世界の穀物価格はアメリカ・シカゴの商品取引所で決められる。これは先物取引である。今では、穀物だけでなく、原油、金、通貨なども先物取引で価格が形成されている。

しかも、世界で初めての先物市場は、大阪堂島のコメ市場だった。先物取引は日本人が発明したのだ。先物市場があれば、独占的な価格形成はできない。穀物大商社のカーギルでも先物市場の価格形成に影響を与えたり操作したりすることはできない。穀物価格が大きく変動するのは、その証左である。