「引き算で開発」して3万円台を死守
そしてOSH fitの開発において重視したのが3万円台を「外さない」ラインとして設定したことだ。現在、小型の縦型洗濯機市場では、中国系メーカーが2万円台前半で市場に参入。大手国内メーカーが4万円以上の価格帯を維持している。
OSH fitは意図的にその中間に位置取りした。アイリスオーヤマでは、「自分たちが欲しいけど届くくらいの予算内」(岩本さん)をユーザー感覚から逆算し、その価格内で実現できる機能を選び抜く「引き算の発想」の開発スタイルを採り入れている。
「洗剤自動投入機能なども検討しました。実際、8kgや10kgのOSHには搭載しています。ただ、fitは新生活ユーザー向けだったのであえて搭載せず、『9分洗濯』という価値に振り切りました」(岩本さん)
新生活で一人暮らしを始めるときは、多くの家具・家電を買い揃えることになる。このため、OSH fitではコストを重視し、付加機能を搭載するより売価を3万円台に設定することを重視したというわけだ。その戦略が当たって、昨年同商戦期比で売り上げ245%のヒットを実現した。
競合他社を引き離す「アフターサービス」
OSH fitのヒットで弾みのついたアイリスオーヤマの洗濯機事業は、次のフェーズへ移行する。これまでの若年単身層に加え、30〜40代のファミリー層への接点を増やすことが明確な課題だ。
「若いユーザーと一緒に成長するとともに、新しいファミリー層にアプローチをかけていくことが必要です。大型ラインは今後強化していきます」(岩本さん)
また、中国系メーカーやニトリなど、国内家電メーカー以外から参入するプレイヤーが増加し、価格競争が激化する中で、差別化要因として強調するのが「品質」と「アフターサービス」だ。
アイリスオーヤマでは、配送・設置・修理の対応を自社体制で全国展開している。これも競合との差を引き離すポイントになる。
「洗濯機の価格競争はさらに激しくなっています。ただし、ドラム式洗濯乾燥機は品質も重要。価格を意識しつつも、品質を犠牲にしないことを重視しています」
かつて大手メーカーの家電に対して、低価格が売りの「ジェネリック家電」と呼ばれたイメージを脱し、品質とデザインで選ばれるブランドへと進化を続けているアイリスオーヤマ。ユーザーからもデザイン面で評価されることが増えているという。また、2020年からCMタレントとして俳優の吉沢亮さんを起用していることによるブランドの認知拡大効果もある。
OSH fitが若年層中心に売れたことで、洗濯機市場でのアイリスオーヤマの存在感は強くなっていく。今後、展開予定の大型モデルや新型ドラム式などの展開に注目したい。


