「女性の継承排除」を改正した欧州の公国
未来のことを考えるのか、それとも過去にこだわるのか。ヨーロッパのリヒテンシュタインと日本では、今回その点で大きな違いが生まれた。
リヒテンシュタインは、オーストリアとスイスに挟まれた小国で、公用語はドイツ語である。「リヒテンシュタイン公国」と名乗り、国家元首はリヒテンシュタイン公である。
リヒテンシュタインでは、これまで公位継承は男性に限られ、女性は継承から排除されてきた。その変更が、8月15日の建国記念日に発表され、将来の世代について「男子限定の長子相続制」から、「絶対的長子相続制」へと改められた。
つまり、今後生まれる世代については男女の別を問わず、「長子」が公位を継承することになったのだ。
ヨーロッパにある王室では、その方向へと王位継承制度が改められてきた。これまでリヒテンシュタインは、女性を継承から排除する制度を維持してきたが、今回それが変更されたのである。
ヨーロッパで、男子優先の制度を依然として続けている君主国はスペインとモナコだけになった。ただ、いずれも男子の継承者がいなければ、女子が君主位を継ぐことが認められている。実際、スペインの次代は、現国王の長女であるレオノール王女が継ぐことになっている。
君主位に最もふさわしい「直系長子」
なぜ、リヒテンシュタインで改革がなされたのだろうか。
それは、スペインのように男子の継承者がいなくなったからではない。国家元首はハンス・アダム2世公だが、2004年から国家元首としての職務を長男のアロイス公世子(皇太子に相当)に委ねている。そのアロイス公世子には、1995年生まれの長男、ヨーゼフ・ヴェンツェル公子がいる。現行の継承順位では、アロイス公世子に次いでヨーゼフ・ヴェンツェル公子が公位を継ぐ立場にあり、女性君主が生まれると見込まれているわけではない。
それでも、改正がなされた。それも、この改正が、将来を見据えての「改革」だからだ。アロイス公世子はその点について、「この(公としての)責任に対して最も準備された人物によって導かれることを確実にしたい」と語っている。
最も準備された人物とは、公位を継ぐ家系に生まれた「長子」ということになる。日本の天皇家でいえば、愛子内親王がそれにあたる。
日本でも今回、皇室典範の改正ということで改革が行われたが、その中心となる旧宮家からの養子案は、それとは根本的に異なり、過去に戻ろうとするものである。

