「お急ぎコース」20~30分では遅い

「疲れて帰って、寝る間際に翌日着たい服を洗い忘れたことに気づきます。多くの洗濯機がお急ぎコースを搭載していますが、平均すると20〜30分かかり、干す作業も含めると40分を超えてしまい、寝る直前にそれはきついと考えました」(岩本さん)

このシーンを起点に、「もっと短時間で、限られた衣類だけを洗える機能があれば」という発想がOSH fitの核となった。開発当初は9分の実現は難しかった。9分で動かすだけなら技術的には可能だが、「洗浄力を担保したうえで9分を実現しなければ、洗濯機メーカーとしておかしい」と考えた。

そして完成したのが「ウィングカーブ」と呼ぶ左右非対称の羽根形状だ。従来品では左右対称だったパルセーターの羽根を非対称に変更し、羽根の高さもこれまでより高くした。この形状により、パルセーターが回転する際に多くの水流を巻き込みながら衣類を内外に効率よく攪拌できる。

醤油やコーヒーといった日常的な汚れは特急コースの短時間でもしっかり落ちることを自社テストで確認。「当社最高クラスの洗浄力が実現できた」(岩本さん)。

このとき、OSHシリーズで磨き上げ、さらに進化したウィングカーブ形状のパルセーターがあったからこそ、短時間でも一定の洗浄力を保った9分コースを実現することができたという。

最速9分の特急コースを実現したパルセーター
写真提供=アイリスオーヤマ
最速9分の特急(1kg)コースを実現したパルセーター。ウィングカーブによって衣類をしっかり攪拌する

割り切り設計と生活感を排したデザイン

ただし、特急(1kg)コースは化繊の軽量衣類を対象としており、油分の多いトマトソース系の汚れには不向きだ。「翌朝着たい服をサクッと洗う」という使い方に特化した割り切りのある設計となっており、帰宅後、夕食中や入浴中にサッと洗って、干して寝られる。洗う時間が短いからこそ、忙しい若い世代に刺さったというわけだ。

量販店の現場からのフィードバックでは、この正直な訴求が購入した理由の「最後の一押し」になっているという声が上がっているそうだ。

さらに、OSH fitシリーズが市場で広く受け入れられた理由は、9分の時短機能だけではない。担当者が特に強調するのがデザインへの投資と価格だ。

洗濯機本体は生活感を排したマット仕上げと、洗濯中も槽内が確認できる透明なドア(ふた)を採用。一人暮らし向け物件に多い玄関横の洗濯機置き場にも馴染むデザインに仕上げた。さらに、ブラックモデルでは洗濯槽の内側までグレーに統一するこだわりもみせる。

「内部パーツを共通化したほうがコストは抑えられますが、それよりデザインを選んだ」と岩本さんは語る。このデザイン性の高さは量販店店頭での評判がかなり良く、それが購入に繋がったケースが多いという。

通常カラーバリエーションを用意した場合でも内部パーツは共通にするが、OSH fitではブラックモデル用に内部にグレーパーツを用意
写真提供=アイリスオーヤマ
通常カラーバリエーションを用意した場合でも内部パーツは共通にするが、OSH fitではブラックモデル用に内部にグレーパーツを用意。これがデザインの完成度を高めている