迷走が繰り返される可能性は高い
もちろんイランは今後も、海峡に対する管理権や安全保障上の権利は主張するだろう。おそらく革命防衛隊も、「ホルムズ海峡の安全確保は地域諸国が担うべきだ」という従来の立場を維持するはずだ。
しかし、少なくとも現時点では、▽船舶への課金▽恣意的な通航制限▽軍事的威圧による航行管理、といった実質的支配の一部を後退させた可能性が高い。
これは交渉開始以降で最大の変化と言える。
もっとも、楽観はまだ早い。今回成立したのは包括的な最終合意ではないし、むしろ最も難しい問題が先送りされている。イランは本気なのか、それとも時間稼ぎなのか。そこは今後、見極める必要がある。
イランにとっては、戦争の危険を遠ざけながら制裁緩和を引き出す時間を確保できる。
米国にとっては、ホルムズ海峡再開と緊張緩和という成果を得られる。
双方が利益を得たため、合意が成立したとも言える。
しかし、だからといって根本的な対立が消えたわけではない。本当の難所はこれから始まる。
難しい問題が山積
今後の技術協議では、再び難しい問題が浮上する。濃縮活動をどこまで認めるのか。遠心分離機の保有数をどうするのか。査察権限をどこまで認めるのか。凍結資産をどこまで解除するのか。制裁解除の条件をどうするのか。ホルムズ海峡の管理権をどう定義するのか。「通航料」と「安全管理費」の境界をどうするのか。イスラエルのレバノン攻撃でイラン側が硬化する可能性もある。
どれも容易に妥協できる問題ではない。そして、そのたびに同じ構図が繰り返される可能性が高い。
今回の合意によって戦争の危険はひとまず遠のいた。だが、交渉の迷走が終わったわけではない。むしろ本格的な駆け引きはこれから始まる。トランプ流ディールとイラン流バザール交渉が向き合う限り、今後も迷走が繰り返される可能性が高い。

