「面」ではなく移動の「線」をたどる
ニューカマーの移動は、日本にとってまったく「新しい」ものとは言えない。中国人が「満洲国」のあった東北部から来日したように、あるいは南米や東南アジアに渡った日本人の子孫が日系人として来日したように、そこには近代日本における人の移動が織り込まれている。日本国内だけを見ていては、こうした動きは見えてこない。
現在の外国人の分布は、地方ブロックだけでは説明が難しい。例えば、島根県にブラジル人が多いことは、地方ブロックよりもむしろ出雲村田製作所という「点」で見たほうが分かりやすい。また、近年では、台湾の半導体受託製造企業(ファウンドリ)TSMCが熊本に工場を建設したことによって、熊本に台湾人が増加するという動向もみられる。
国境を越える移民は、地方ブロックはもちろん、「南海日本」や「中央日本」など本書で示した地域区分からもはみ出るような動きである。
ある国や民族がつくりだす領域は、まとまって存在するのではなく、人やモノの移動にともなってあちらこちらに「飛び地」をつくりだしていく。海を渡り、再び日本に戻ってきた日系人のように、文化は移動しながら混ざりあい、複雑に変容していく。
外国人の地理を理解するためには、地域区分という「面」ではなく、移動の「線」をたどることが重要だ。


