ベトナム人技能実習生の大きな波

2010年代以降、日本ではベトナム人が急激に増加した。ベトナム移民の端緒は1970年代のベトナム戦争後の難民、いわゆる「ボートピープル」にあるが、近年の波は「技能実習生」によるものである。

外国人技能実習制度は1993年にはじまり、当初は中国人が多かった。しかし、中国の経済成長によって出稼ぎに来る中国人が減少し、それに代わってベトナム人の受け入れが盛んに行われるようになった。

ベトナム人の特徴は、大都市圏以外にも分散していることである。都道府県ごとの「最も多い外国人」を見ると、34道府県でベトナム人が1位となっている(図表3)。

最も多い外国人

出所=『新しい日本地理

全体の人口で言えば中国人のほうが多いのだが、中国人は大都市に集中しているため、地方ではベトナム人のほうが多くなる。

人口減少が進む地方で不可欠の存在

ベトナム人実習生は建設業や食品製造業、農業、漁業など多様な職種に従事しているため、大都市圏以外でも受け入れが進んでいる。むしろ、人口減少が進む地域だからこそ、外国人の存在が不可欠と言ったほうがよいかもしれない。

地方に住むベトナム人は、大都市圏と比べると社会的なつながりの形成が難しい。そうした「非集住地域」では、ベトナム語のミサを開いているカトリック教会や、ほかの外国人も集まる日本語教室、Facebookでの交流などが社会的ネットワークを支えている。

発展途上国への技術移転を目的としてはじめられた技能実習制度は、実質的には外国人労働力の供給源であった。このいびつな制度は、技能実習生への賃金不払いや暴行など多くの問題を生んだ。2024年技能実習制度は廃止されることになり、2027年4月からは「育成就労」という新たな制度へ移行することになった。

この数年増加が著しかったベトナム人だが、コロナ禍以降は上昇率が鈍化している。日本での過酷な労働環境が知られるようになり、ドイツやオーストラリアなどほかの国への出稼ぎが増加したためだ。

それに代わって、コロナ禍以降はネパール人やインドネシア人の増加が目立つ。アジア諸国が経済成長する中、日本はいつまで「選ばれる国」でいられるだろうか。